トランプ政権発足、対峙する石破首相に今必要な事 フラット化の時代から「逆戻り」する世界
インターネットは1990年代以降、世界のフラット化を推進してきた。アメリカのカリフォルニア州を中心に若い起業家が次々と新しいネットビジネスを立ち上げ、GAFAMという巨大企業群に発展した。世界中で自由に情報にアクセスできるようになったことから、ネットは民主主義に貢献し、格差の是正につながるものとして歓迎された。
だが、近年はGAFAMなどの寡占、独占が進んだ。その結果、X(旧ツイッター)を所有するイーロン・マスク氏ら、ネット事業で巨万の富を手にする「テックビリオネア」が出現。格差是正どころか、格差拡大の象徴となっている。マスク氏はトランプ氏の選挙を全面支援。巨額の資金提供も行った。トランプ政権では政府効率化省のトップに就任する予定だ。
アマゾン創業者のジェフ・べゾス氏が買収したワシントン・ポスト紙は、大統領選でハリス副大統領(民主党)を支持する社説を準備していたが、べゾス氏が掲載を見送らせたことも明らかになった。テックビリオネアによる言論支配も進んでいる。バイデン前大統領は退任演説で、テック企業の巨大化に関連して「テック産業複合体の台頭はアメリカに現実的な危険をもたらす恐れがある」と懸念を表明した。
市場原理重視から国家の介入拡大に転換
冷戦後のアメリカは、大きな政府志向だった民主党のクリントン大統領が「大きな政府の時代は終わった」と宣言するなど「小さな政府・規制緩和」の路線を進んだ。
それが、同じ民主党のオバマ大統領が医療保険制度の拡充に踏み出し、バイデン大統領は半導体企業に巨額の補助金を支出するなど「大きな政府」に回帰した。経済安全保障を理由に日本製鉄によるUSスチール買収を阻止する決定を下したのも、バイデン大統領だった。
フラット化の時代の柱だった市場原理を重視する路線は、国家の介入拡大に転換しつつある。
そうした状況下で第2次トランプ政権が「アメリカを再び偉大に」(MAGA)を掲げて動き出す。中国だけでなく同盟国にも高関税を課すことをテコにして、さまざまなディール(取引)を繰り広げるだろう。不法移民の強制送還や国境の壁建設も進みそうだ。温暖化防止の枠組みであるパリ協定からの離脱も決定。温暖化防止に取り組んできた関係者に失望が広がっている。
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