入念に準備したプレゼンはなぜ失敗するのか? 現場では「準備したことを忘れる」ことが大事
「入念に準備して、全く忘れる」という矛盾について、私の知人の哲学者である谷川嘉浩さんが、鶴見俊輔の言葉を引用しながら、巧みに表現した一説があるので、それをそのまま紹介したいと思います。
まさに、ここで書かれている「竹刀を軽く握る」という表現は、「入念に準備して、忘れる」という状態を表したこれ以上ないメタファーだと思います。
シナリオ通り実現しようと力みすぎてはうまくいくはずがありません。いつでも手放せるように軽く握っておく。それくらいの力加減でよいのです。
場の空気や参加者の感情を知覚する
もう少し具体的に、宇野さんがどう行動するのがよいかを考えてみましょう。まずは、いったん営業戦略会議のシナリオや着地点を忘れて、目の前に漂う「場の空気」を知覚する必要があります。
「今日のこの場にはポジティブな空気が流れているのか」「カタさが残っているのか」「焦っている人はいないか」。今この瞬間に流れている場の空間を知覚することです。
もちろんその場で何もせずに知覚することは難易度が高いので、今どんな気分なのかを一人ずつ語ってもらう、いわゆる「チェックイン」という対話を通じて会議をスタートすることができれば、その日の「場の空気」をより知覚することができるでしょう。
いずれにせよ、相手は機械ではなく、生身の感情のある人間です。だとするならば、それぞれが今日この場に持ち込んだ感情を認知することから始めることが重要です。
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