入念に準備したプレゼンはなぜ失敗するのか? 現場では「準備したことを忘れる」ことが大事

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皮肉なことに、この宇野さんの作り上げたロジックが正しければ正しいほど、感情的なリアクションになるはずです。宇野さんが避けたかった2年前のような感情的な議論が、宇野さんに矛先が向く形で起きてしまう可能性があるのです。

入念に準備して、忘れる

では、宇野さんはどうすべきなのでしょうか? この準備は間違っていたのでしょうか?

もちろん、入念な準備そのものは間違っていません。根拠を揃えながらロジックを組み立てていくことは、とても重要なことです。しかし、会議前に入念な準備をするというのは、度の強いレンズをかけるということでもあります。

だから、そのままの状態で会議に臨んでしまうと、シナリオに囚われて会議室内が歪んで見えてしまう。だから、レンズをいったん外すという行為をしなくてはなりません。

私もよく会議やイベント登壇の場面でファシリテーターを任されますが、その時に心がけることがあります。それは、「事前準備は入念にするが、現場では準備したことを全く忘れる」ということです。

「全く忘れる」と自分に言い聞かせることにより、現場で起きている環境の認知にリソースを使うことができるのです。目の前にいるのは、シナリオ通りに機能する機械ではありません。感情を持ち、常に変化している人間です。

そしてその人間たちが、その時にしか生み出されない「場の空気」を作っています。その空気に意識を向けなくては、難易度の高いファシリテーションはうまくいくはずがないのです。

もちろん全く忘れると言っても、入念に準備したのだから、実際には全く忘れることなんてできません。だから、いざという時には準備した記憶を辿って、適切な主張をすることができる。つまり、頭が忘れようが身体はちゃんと覚えているのです。

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