ジャフコ「セクハラ問題」に政投銀は曖昧な姿勢 政府系金融機関が問われる「ビジネスと人権」意識

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DBJは政府が100%出資する政府系金融機関。国からの一部出資を活用して成長資金を供給する特定投資業務を行っている。ジャフコが運営するファンドへの出資もこの特定投資業務の一環だ。

高い公共性を有する事業活動には重い責任がある。そして、高い透明性が求められることは言うまでもない。しかも政府は、大企業から中小企業に至るまで「ビジネスと人権」に関わる施策を進めるよう推進してきた立場だ。

指宿弁護士も「(一般的に)政府系企業は出資額も大きく影響力も大きい」とし、「率先して問題解決に取り組み、どんな対応をしたのかを社会にしっかり公表していくべきだ」と語る。

しかし、申し入れに対するDBJの回答は、「個別取引に関わる事項となるので、回答を差し控えさせていただく」(法務・コンプライアンス部)というものだった。

ジャフコのセクハラ事件に対する関係企業の対応

同じ「政府系」でもJICは姿勢鮮明

他方、DBJ同様に「政府系」とも称される投資会社の産業革新投資機構(JIC)は、ハラスメント問題への姿勢を明確にしている。

昨年12月、JICは出資要件の見直しについて発表。出資するファンドに対してハラスメント防止規定などの制定を求めるとした。背景にあるのは、ベンチャーキャピタルファンドなど投資家による女性起業家へのセクハラ問題だ。

JICの久村俊幸CIO(最高投資責任者)は、出資先でハラスメントが起きた際、すぐに駄目だと判断するのではなく、「起きた際にどのように対応するか」「改善の見込みがあるかどうか」を重視するという。実際、「改善の見込みがないと判断したケースでは出資を見送った」と説明する。

東洋経済はDBJに対して、「出資先の企業で深刻なハラスメントが発生した場合、人権問題として対応するべきか」「JICの出資要件のようにハラスメント対策を促す取り組みがあるか」などを質問した。しかしDBJの返答は、「個別の取引に関わる事項となるので、回答を差し控えさせていただく」というものだった。

「人権尊重はすべての事業活動の前提である」などと自社の統合報告書に明記するDBJが、ハラスメント問題にどう対応するのかは判然としない。大きな影響力を行使できるはずのDBJの沈黙ぶりは、「ビジネスと人権」が目指す企業の人権尊重のあり方とすれ違うように見える。

「ビジネスと人権」に詳しい蔵元左近弁護士は、「金融機関に重い守秘義務があるのは事実だが、『ビジネスと人権』が要請する説明責任をどう果たすのかという観点から情報開示のあり方を検討することが重要だ」と指摘する。

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