単なる増税のみでは財政・経済が危うい
広範な構造改革を
主要メディアは、総じて消費税率引き上げるべしの論調だ。財政が危機的であり、消費税率引き上げを先送りすれば欧州ソブリン(国債)危機の二の舞いになりかねないというのがその論拠である。これは決して間違ってはいないが、疑問符もつく。往々にしてメディアは、「AかBか」という二者択一の議論に乗りやすい。その体質を見抜いて二者択一形式による問題提起をメディアに投げるのは、当局者の常套手段だ。今回もそのような気配が濃厚である。だが、事態はそれほど単純ではない。GDPの200%にも達しようとしている国債残高の膨張を目の当たりにして、単なる消費税率引き上げで足りるのかという指摘をしたい。
消費税率の引き上げを見送れば、確かに日本国債は格下げされかねない。その機に乗じて、海外ヘッジファンドは国債売りなど市場へのネガティブインパクトを激化させる可能性がある。一方、消費税率引き上げは国内消費を後退させる。1997年、橋本龍太郎政権が消費税率を現行の5%に引き上げた際も、その後の景気悪化が避けられなかった。
景気後退は税収減少をもたらす。中でも消費税率引き上げから間もない時期には、そうなる可能性が高い。つまり、歳出構造がそのままであるかぎり、国債発行圧力は強まりかねない。消費税率引き上げを見送った場合と同様のリスクが発生する。
国内外の経済情勢が深刻化している中での消費税率引き上げには、このような副作用を食い止める防波堤的な政策を伴う必要がある。たとえば、規制緩和を果敢に実施し、果実を確実に実体経済に採り込む戦略がパッケージされてよい。特に震災復興に関連した規制緩和は大々的に進めるべきである。