単なる増税のみでは財政・経済が危うい

さらに経済を大きくとらえると、円相場を背景にした貿易収支、経常収支の行方にも注視すべきだ。昨年は円高、震災などで貿易赤字が継続した。年間でも貿易収支は赤字となる見込みで、円高是正の必要性は年が開けても変わらない。しかしその一方、急激な円安反転は、輸入価格を大幅に押し上げて貿易収支を一段と悪化させるため、経常収支の悪化にもつながりかねない。そうなれば、長期金利、すなわち国債金利に上昇圧力が加わりやすい。

為替相場に端を発した、この両面のリスクを緩和するためにも、官民挙げてクロスボーダー取引の円建て化拡大に注力すべきであり、政府はその枠組み作りに注力することが求められる。折しも金融面では、欧米の銀行が邦銀にドル建て資産の売却意向を強めている。多様なアプローチを考えるべきである。

要するに、単なる増税だけでなく、広範な構造改革が伴ってこその難局打開なのだ。

政策無縁の政治家は不要

付言すれば、国会議員定数の削減は消費税問題なしでも必要である。被災地を訪れた際など、特にそんな思いが募る。政府による東日本大震災の復興がようやく始動するとはいえ、それは震災発生から約1年という月日を浪費した揚げ句であり、この緩慢さには怒りすら覚える。

今、被災地では、防寒対策が劣悪な仮設住宅で、体力の衰えた高齢者が息を引き取ったという場面にしばしば遭遇する。そのたびに胸中をよぎるのは「棄民」という言葉である。政治家は内容のある政策の実行を懸命に加速させるべきだ。

(シニアライター:浪川 攻 =週刊東洋経済2012年1月28日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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