単なる増税のみでは財政・経済が危うい
国債の安定的な消化のために規制緩和が検討されてもよい。わが国の国債のほとんどは国内で消化されている。その多くを海外に依存してきたギリシャなどとは事情は異なる。「国債発行残高の膨張は恐れるに足らず」とする向こう見ずな論者もいるほどだ。
しかし、国内消化構造の過信は禁物だ。過半を消化している金融セクターでは、近年、メガバンクから中小金融機関まで国債保有残高が増加の一途にある。残念ながら、この構造を抜本的に改善することは期待できそうもない。わが国は引き続き、メガバンクなどに多くを依存した国債管理体制を続けざるをえない。
国債消化の重圧が増し続ける以上、メガバンクをはじめとする金融セクターが経営体質、収益力を一段と強化、安定化できるような業務多様化などの規制緩和を実施していくことが望ましい。ただし、規制緩和はモラルハザードを招きやすい。近年における欧米金融業界の無節操ぶりを振り返るまでもなく、この問題は極めて重要である。金融セクターの自己規律を的確に向上できるような枠組みも必要となる。
国の歳出構造にメスを入れることは論ずるまでもない。ムダを省き、埋蔵金を探り当てるという従来パターンのアプローチだけではなく、本誌11年9月10日号の本欄で提唱した民間のソーシャル・ファイナンスを本格的に育成し、財政負荷を和らげるような新たな取り組みを急がなければならない