「良識の府」が総括質疑をスッ飛ばす異常事態 安保法案を巡る終盤国会は何かがおかしい

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午後1時に再開された平和安全保障特別委員会で、不信任動議を否決された鴻池委員長が委員長席に戻ろうとした時に、事態は動いた。

いちはやくその気配を察した福山氏らは委員長席に駆け寄り、後ろにいる仲間に前に来るように呼びかけた。自民党の議員たちも、鴻池委員長を守るべく委員長席に駆け寄った。そして与野党の議員が激しくもみ合う中で、鴻池委員長は採決を行ったのである。その途中で安倍首相は席を立ち、無言で委員会室から退室している。

そして与党議員が立ちあがり、法案が成立した。ちなみに民主党と共産党は一部の議員が乱闘に参加し、また立ったり座ったりするなどバラバラだったために、「反対」ではなく「態度表明不能」とされている。「法案に反対」として記録されているのは維新の党だ。同党は16日の執行役員会で「ピケやもみ合いはせず、きちんと反対の声をしていく」と決定していた。ただし安保法制の維新の独自案については、自民党と協議したが整わなかったため、審議も採決もできなかった。17日に開かれた同党の議院総会では、「採決するとなれば、維新案が政府案より先になるはずだったのに」と、同法案を担当した小野次郎参院議員などが悔しさをにじませたという。

不思議な怪談話も

さて安保関連法案が無事に採決され、鴻池委員長が衛視らに囲まれて退室した後、委員会室に残ったのはあっけない空気となんともいえない後味の悪さだった。それを示すように、実は不思議な話が残っている。

それは法案採決の時の乱闘に、議員でもなく参院の職員でもない、身長約170センチの見知らぬ男性が参加していたというのだ。これについて参院事務局がNHKの映像を再生してチェックしたというが、いまのところは不明。この昼間の怪談話は、各党に広まっている。

すでに舞台は平和安全保障特別委員会から参院本会議に移り、17日午後8時10分から中川雅治参院議院運営委員会委員長の解任決議案が審議され否決されている。その後、延会手続きを経た後、18日午前0時10分に中谷防衛相の問責決議案を審議。午後2時10分に否決された。

さらに参院議院運営委員会理事会は山崎正昭参院議長の不信任決議を18日午前10時からの本会議で審議することを決定したが、これは少し驚いた。というのもかつて民主党が議長の不信任案を出そうとして、自民党から逆に副議長の不信任案の提出を示唆され、数の上で議長の不信任案は否決されるが、副議長の不信任案が可決されそうになったため、諦めたことがあるからだ。ならば可能性が低いと言われた塩崎恭久厚労相、下村博文文科相に対する不信任案もあるかもしれない。塩崎厚労相は改正派遣法、下村氏はオリンピックに関する新国立競技場問題やエンブレム問題に絡んでの責任追及だ。

いまの国会は自民党が多数を占めるため、数で勝負するのはほぼ不可能。しかし少数であっても、勢いを示すことはできる。民主党にとっては、浮上につなげる好機だ。実質的に通常国会最終日になる18日に、いったい何本の不信任案が提出されるのだろうか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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