「良識の府」が総括質疑をスッ飛ばす異常事態 安保法案を巡る終盤国会は何かがおかしい

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「昨日の理事懇段階での合意事項はどうなっているんだ!」

声を荒げるのは民主党の福山哲郎参院議員。なんとか鴻池委員長を理事会室に戻そうと躍起になっている。これに反論したのは公明党の荒木清寛参院議員だ。

「いっぺん(理事会室に)入ったら出てこられない。人道上を考えてのことですよ。9時間も出られないことはありえない」

自民党の佐藤正久参院議員も福山氏を批判した。

「いちいちお伺いをたてないと、トイレにも行けない状態だったじゃないか」

福山氏も負けてはいない。

「さきほど委員長は理事会室に『戻れ』と言った。あなたが勝手に握りつぶしているじゃないか」

理事たちの後ろには、多くの議員たちが控えていた。その一部は腕を組み、発言こそしないものの、憤然たるその気持ちを態度で示していた。

こうしたやりとりは、NHK放送や参院のネット中継、さらにはニコニコ動画などで全国に配信され、多くの国民が目撃することになった。

異例に異例が重なっていく委員会運営

その騒ぎがなんとか収まり、鴻池委員長が平和安全保障特別委員会の開会を宣言したのは、予定より45分遅れた午前9時45分。だがその直後、福山氏は鴻池委員長の机の上にいきなり不信任動議のペーパーを提出している。

これは異例なことだが、それに対する鴻池委員長の反応もまた、異例だった。このペーパーを読んでそのまま正式の不信任案としたばかりではない。そもそも委員長の不信任動議が出されて審議する場合、委員長は別人を指名して交代しなくてはいけないのだが、その「宣言」をせずして、自民党の筆頭理事である佐藤氏に委員長席に座らせたのだ。

「今回の平和安全保障特別委員会は、およそあるべきではないことが多発している」

与野党ともに関係者が口ぐちにこう述べているのは、上述のような運営上のことだけを指しているわけではない。締めくくり総括に安倍晋三首相と岸田文雄外相、中谷元防衛相を呼び出しておきながら、いきなり質疑を省略して安保関連法案が採決されたのである。参議院は、学識経験者を主体とした良識の府であることが期待されている。ここで冷静な議論が行われないことは、大きな不幸と言えるだろう。

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