古代ローマの頃から変わっていない戦争の性質 戦争は始めるのは簡単だが終えるのは困難

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ヤマザキ:平和というのがそもそもどういうものなのか。勝った負けたで得られるものではなく、そこに問われるのはやはり人の知性や寛容さなのかもしれません。ちなみにリーウィウスは私たち夫婦が暮らしているパドヴァ出身ですが、うちの夫がとても尊敬しています。

正義を吟味する

ヤマザキ:古代から現代まで、私たちは戦争の時代を生き続けています。私は母が第2次世界大戦の経験者だったので様々な話を聞かされてきましたが、かつて暮らしていたシリアや、度々訪れたり、友人がいたレバノンが爆撃で無惨な状態になってしまった映像を見ると、戦争を体験していなくても、自分の思い出や記憶が粉砕されてしまったような、実に辛い気持ちになります。

これだけたくさんの戦争を揶揄したり平和を求める格言が残り続けているのに、人は相変わらず戦っている。そう考えると問題解決に対するアドヴァイスというより、人間の生き方を短く要約した観察記録と捉えることもできますね。

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ラテン語:戦争中の当事者に対して、古代の引用句とともに「戦争反対」と言っても、その効果には限界があると思います。できることは、次の世代に戦争の虚しさを伝え、将来戦争を起こさないようにすること。教育が大事なのかなと思います。

ヤマザキ:何が何でも自分たちの正義や信仰を正当化し、相手に認知させたいというのが戦争の理由なのだとしたら、もとより「正義」という言葉自体がもっと吟味されなくてはいけないように思いますね。国や地域や歴史や宗教が変われば当然“正義”とされるものも変わる。“正義”というのは、世界中の人々が共通の認識で解釈できる言葉ではないということです。

ラテン語:正当防衛にしても、何が「正当」なのか。

ヤマザキ:“正義”も“正当”も実は時代や場所によっていかようにでも変化する、とても曖昧なものなんですよ。

ヤマザキ マリ 漫画家・文筆家・画家

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やまざき まり / Mari Yamazaki

1967年東京都生まれ。漫画家・文筆家・画家。東京造形大学客員教授。84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。2010年『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。15年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。17年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ章受章。著書に『プリニウス』(新潮社、とり・みきと共著)、『国境のない生き方』(小学館新書)、『オリンピア・キュクロス』(集英社)など多数。

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ラテン語さん ラテン語研究者

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らてんごさん / Ratengosan

ラテン語研究者。栃木県生まれ。東京外国語大学外国語学部欧米第一課程英語専攻卒業。ラテン語・古典ギリシャ語の私塾である東京古典学舎の研究員。高校2年生でラテン語の学習を始め、2016年から X(旧Twitter)においてラテン語の魅力を毎日発信している(アカウント名: @latina_sama)。研究社のWEBマガジンLinguaにて隔月連載中(シリーズ名: 名句の源泉を訪ねて)。ラテン語を読むだけでなく、広告やゲームなどに使われるラテン語の作成や翻訳も行っている。

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