古代ローマの頃から変わっていない戦争の性質 戦争は始めるのは簡単だが終えるのは困難
ヤマザキ:だいたい中東で起こっている紛争の動機やきっかけは、ほぼ古代の時代から変わっていないですからね。
ラテン語:戦記を読んでいると、確かに勇ましい、俗っぽくいえばカッコいい面もあるにはあるんです。例えば、カエサルの部下のクラスティヌスという人が合戦の日に言ったのが、「今日私が死んでも生きていても、あなたは私にお礼を言うことになるでしょう」。
こういったエピソードを見ていくと、戦のロマンというものを感じる一方で、やはり大前提として平和を希求する気持ちがあります。
『ユグルタ戦争』では、戦争を始める人と終える人は同じ人ではないことも書いています。戦争を始めるのはどんな臆病者でもできるが、終わるのは勝っているほうがやめたいと思う時だけ。戦争を始めた人とは異なる、勇気ある人が必要だと示唆しています。
ヤマザキ:だとすると勝利がはっきりするまでは終わらないということになってしまいますが、複雑な構造によって展開される戦争というものの実態を生々しく反映している言葉ですね。
ハンニバルのスピーチ
ラテン語:続いてはリーウィウスの『ローマ建国史』のなかの、ハンニバルのスピーチに使われた言葉です。
meilor tutiorque est certa pax, quam sperata victoria「確実な平和は期待される勝利より優れ、より安全である」
ハンニバルは、カルタゴの将軍としてローマと戦った人物です。この言葉は、その時点では戦いを求めていなかったハンニバルが、ローマを説得するために行ったスピーチです。明日の百より今日の五十ということわざにも通じる言葉かと。