クライアントの奴隷となり、値引き交渉や顧客からの逆ギレのような責任転嫁 、接待、セクハラに耐え、靴を履き潰して1日、外を歩き回る。上司はいつも「数字」のことばかり責めてきて、それなのに手柄は独り占め。本社や本部からは「ライン」と言われて軽く扱われ、きっと人の顔色を見る能力や、ゴルフや飲み屋でのコミュニケーションスキルくらいしか身に付かない……。
営業は「おしゃべり」で「浅薄」?
「おしゃべり」「浅薄(せんぱく)」かつ「頭はよくなくて感情で生きる人」と烙印を押されたような気分でした。当時は世の中的にも、あまり女性の営業を見掛けなかったので、余計、テレビドラマでよく見るようなステレオタイプな印象を持ってしまっていたのかもしれません。
だからあなたの気持ちもよくわかるつもりです。自社のサービスや商品がいくら好きでも、転職のときに「○○部でMVP獲得」なんてアピールしたところで、何になるのでしょう。人事や経理、企画にいたらもっとビジネススキルが身に付き、将来のイメージも描けそうなものだけれど、営業でいくら頑張っても営業管理職にしかなれない、自分で売らずに部下に売らせるだけじゃん、と思ってしまう。今のあなたの気持ちは、私を含め、たくさんの営業経験者が感じてきたものなのかもしれませんね。
もし、あなたがどうしても「営業とはどんな仕事なのか」を感じる余裕などない、どうしても愛せそうにない仕事だ、職種をはっきりさせたうえで転職したいと言うのであれば、無理に引き止めることはできないでしょう。でも私があなたの上司だったら……と考えると、言いたいことがいっぱいあふれてきます。私は20年の営業経験で、営業の面白さや意味をすごく感じているし、思いがけず大好きになった仕事だからです。
詭弁のように聞こえるかもしれないけれど、私は営業とは企業の営みそのものだと思います。そして、ゼネラリストになり、マネジメントを担う人材になりたいと願うならば、経験して損のない職種だと思っています。ゼネラリストに価値があるかどうかはさまざまな意見や価値観がありますが、私はゼネラリスト的なものの市場価値が案外高いと思っている派です。
どうしても「○○のスペシャリストになりたい!」というのであれば別ですが、ただ「マーケティングをやってみたかった」だけなら、まずは広い視野で、営業とマーケティングの関連を考えてみてはどうでしょうか。
私の場合は、若手の頃から面倒くさいヤツで、上司にはたいへん苦労をかけたタイプです。だから、「なぜ、それをやるのか」をいちいち説明されて納得しないと、動けませんでした。「とりあえずやってみるか」とは思えなかったのです。そして、商品企画などの本部の人が「営業のことを馬鹿にしている」と思ってしまう、ひがみ根性丸出しの嫌なヤツだったので、企画会議などで自分の発言が重く扱われることでしか自分の価値を感じられませんでした。だからこそ、なかなか営業の仕事を好きだ、と言い切れなかったですね。
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