「セブン買収合戦」、創業家の9兆円MBOに黄信号 2025年2月中に買収したいが、資金集めに苦戦か

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一般的にLBOでは買収資金の3~4割をエクイティでまかなうケースが多い。9兆円の買収となれば、3兆円前後の自己資金が必要だ。が、事情をよく知る関係者の多くが「まだエクイティが足りておらず、2月中の完了は厳しいだろう」と指摘する。

ブルームバーグのビリオネア指数によれば、伊藤家の総資産は約7400億円と推定されている(2024年12月時点)。その多くをセブン&アイの株式が占め、伊藤興業は同社株を8.16%、伊藤副社長個人も1%の株式を保有している。今回の買収において、伊藤家が自腹を切れるのは1兆円程度だと考えられる。

伊藤順朗氏はグループ創業者である故・伊藤雅俊氏の次男。兄は麗澤大学客員教授の伊藤裕久氏、姉は伊藤謝恩育英財団の理事長を務める山本尚子氏で、順朗氏を含め3きょうだい。山本氏が創業家の中でも発言力があるとされる(撮影:今井康一)

先述のように9兆円規模のLBOとなれば、通常はエクイティだけでも3兆円程度は求められ、創業家はさらに約2兆円を工面する必要がある。創業家は総合商社の伊藤忠商事にも資金の拠出を要請しているが、伊藤忠も1社で残りを補うのは難しい。

金額の大きさもさることながら、伊藤忠は子会社にファミリーマートを抱える。独占禁止法上の懸念や社内の関係者、加盟店オーナーなどの理解を得るためにも、過半など高いポジションをとる意思はないとみられる。持ち分法投資益を取り込める、エクイティ全体の15~20%程度の負担が妥当な線だろう。

借り入れにも難路

エクイティが不足する中、残りの買収資金を全額借り入れでまかなえるか、というとそう単純な問題でもない。

たしかに国内銀行の融資体制は手厚い。関係者によるとセブン&アイのメインバンクである三井住友銀行などメガバンク3行が大口信用供与等規制(銀行が一グループの貸出先へ行う信用の供与等の額を制限する規制)を超えない範囲で、1兆円超ずつの融資を検討している。

りそな銀行や三井住友信託銀行も参加を検討している。国内銀行団による融資は総額5兆円程度とみられ、国家プロジェクトの様相を呈している。

が、買収総額の7割を負債で調達しようにも、金額にして6兆円が必要だ。あるメガバンク上級幹部は「邦銀だけでどうにかなる問題ではない」といい、外資系投資銀行(外銀)にも融資への参画を打診していると明かす。バンク・オブ・アメリカやシティバンクの名前が候補に浮上している。

ここでもエクイティ不足が影響してくる。取引の内情をよく知るこの幹部は「外銀を説得するためにはもっとエクイティを積む必要がある」と指摘する。

伊藤家と伊藤忠の出資だけでは買収資金総額に占めるエクイティの比率が低すぎる(=レバレッジが高すぎる)ため、外銀の融資審査基準をクリアできていないようだ。

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