JTが「紙巻きたばこ会社」を買収した納得の理由 アメリカへ進出、なぜ縮小する紙巻きに注力?

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そこでJTは、2024年から2026年までの3年間で加熱式へ4500億円投資する方針を掲げる。旗艦ブランド「Ploom(プルーム)」の販売拡大に向けたマーケティングや海外市場の開拓に力を入れる。

アドバンスドは製品名を伏せた調査で、競合よりもユーザーの支持を得ることができたという(編集部撮影)

例えば日本では、昨年11月に税込1980円で発売した最新デバイス「Ploom X ADVANCED(プルーム・エックス・アドバンスド)」を今年12月に同980円へと値下げした。

シェア首位のPMI「IQOS(アイコス)」は最も安いモデルで3980円、BATの「glo(グロー)」は同じく最安モデルで1980円だ。JTは赤字覚悟で新規開拓に全力を注ぐ。

2023年以降はプルームの海外展開を本格化させている。目標は2026年末までに40半ばの国・地域で発売すること。2024年10月末時点で23市場へ投入しており、欧州を中心に少しずつシェアを伸ばしている。

加熱式は2028年までの黒字化を目指すが、現在は認知拡大に向けた投資先行の段階だ。ベクター社の買収は、加熱式の巨額投資のための原資稼ぎに貢献するという構造だ。

紙巻きの買収に「直接的な批判はない」が・・・

ただし、稼げる商材とはいえ、紙巻きたばこには健康面などで世界的に厳しい視線が向けられている。規制を強化する国も多い。ベクターの買収は時代に逆行した流れともいえる。

古川CFOは「加熱式は完全に赤字だが、まさに今投資しなければいけない」と意気込みを語る(写真:今井康一)

これに対し古川CFOは「さまざまな意見があり、逆風の中にいるのは事実」としつつも、「投資家などとコミュニケーションしていて、直接的な批判はない。中長期的に利益成長をし続け、配当や投資などに充てて企業価値を上げていく」と説明する。

JTは今後もM&Aを継続する方針だ。これまでは紙巻きの会社を中心に買収してきたが、加熱式にはデジタルや電子機器関連の技術も必要だ。部品の領域で高い技術力を持つベンチャーも含め、新たな分野での買収を視野に入れる。

紙巻きの売り上げが2035年まで成長するとしても、あと10年。JTに加熱式への投資を躊躇している時間はない。今回の買収をテコに、加熱式のシェア拡大と収益改善を進められるかが焦点となる。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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