「『SCって共感と傾聴以外に何ができるんですか?』と鼻で笑われた」「答えている最中に、手のひらを向けられ『もう結構です』『簡潔に!』『巻きで話して』と強い口調で遮られた」「面接官たちはメモも取らず、退室した途端、笑い声が聞こえてきた」など。
都教委によると、面接を担当したのは学校勤務の経験のある統括指導主事などで、SCの経験はないという。トモアキさんたちの話を聞く限り、一部の面接官にはSCの経験だけでなく、長年、学校現場を支えてきた心理職への敬意もなかったようだ。
SCに限らず、非正規公務員の雇い止め問題を取材していると、その理由について自治体側はたいてい「市民の方々に広く仕事の機会を提供するため」「応募機会を公平に与えるため」と答える。定型文でもあるのか、と思うほど同じ答えが返ってくる。今回、都教委に話を聞いたときも案の定、「雇用機会の公平性確保のため。SCをやりたいという人たちにできるだけ多くの挑戦の機会を持ってもらうためです」と言われた。
しかし、「仕事の機会」を奪われた側の生活はどうなるのか。公務職場の非正規化は進んでおり、総務省によると2020年、地方公務員全体の29%が非正規だという。1年を通して恒常的に存在する業務を担っており、彼らがいなければ公共サービスは維持できない。同時にその収入で生計を立てている人も増えている。自治体自らが生活をかけた“椅子取りゲーム”を強いるかのような光景は、私には異様にしかみえない。
「生活保護水準以下の暮らし」に
トモアキさんのことに話を戻そう。トモアキさんは都内の有名私大の大学院を修了。大学で10年ほど専任講師などを務めた後、塾講師や都内の自治体のSCや専門相談員を経て、都のSCとして働き始めた。
年収は一見すると悪くなかったが、勤務時間の関係で厚生年金に入ることができなかった。このため、国民健康保険料や国民年金保険料などを差し引くと手取り額は450万円ほど。加えて身分も不安定なので、「女性と付き合っても、最後は経済的なことが原因でいまだに独り身です」。
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