大成建設「元会長の大立ち回り」が映す将来不安 「新宿西口再開発」など超難工事でも利益を出せるか

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大成建設の2024年4~9月中間期の建築事業は、粗利率が連結ベースで4.8%、単体ベースでは3.8%でしかなかった。同じスーパーゼネコンと比較すると、鹿島が8.8%(単体ベース)、大林組が6.6%(同)、清水建設も6.1%(同)だった。大きく見劣りしているのは明らかだ。

中野雄一経理部長は「建築については東京五輪後の受注が厳しいときに受注した案件や資材高の影響を受けている案件が、利益率が回復してこない要因になっている。今後は受注時採算がいい案件に入れ替わっていく。2025年度は利益率8%程度を目指したい」と説明する。

ただ、会社の目論見通りに進捗するとは限らない。この先の利益率回復の足かせとなるのではないかと懸念されるのが、同社が本社を構える新宿西口のお膝元で手がける「新宿駅西口地区再開発計画」だ。

気になる「新宿西口再開発」の採算

小田急百貨店新宿店の本館跡地で行われる駅一体開発プロジェクトの1つで、地上48階、高さ約260メートルの超高層の複合ビルが建つ。竣工は2029年度の計画だ。大成建設では「新国立競技場(東京・新宿区、2019年竣工)以来の大プロジェクト」と位置づけられている。

「大成建設にとって、新宿西口でほかの大手ゼネコンの旗をなびかせるわけにはいかない。『やらないわけにはいかない』と頑張って獲ったようだ。受注時採算はそうとう低いだろう」(準大手ゼネコンのベテラン社員)と言われる。

そもそも、新宿駅の上に高層ビルを建設する超難工事だ。私鉄や地下鉄といった鉄道が運行しながらの工事であり、十分な安全配慮も求められる。今後工事が本格化するにつれて、夜間工事の比重が高まる懸念もあり、昨今の資機材高や労務単価上昇の影響を受けそうだ。

元大成建設の社員は、「新宿西口の工事はまだ始まったばかりで、業績への影響は当面ないと考えるのが自然。今後、損失が出たとしても、想定より利益が上振れる案件もあるだろうから、そういったものと相殺して、損失が目立たない処理をするのでは」と見通す。

おりしも、相川社長の肝いりで進めてきた買収戦略が全体収益を底上げしている。

2023年に買収したピーエス・コンストラクション(旧ピーエス三菱)は土木事業での利益率が向上し業績が好調だ。今年6月に持ち分法適用会社化した平和不動産に関しては、のれん償却の会計処理も加わって大成建設の最終利益を押し上げる要因になっている。

来年の株主総会は、山内氏が再び「大立ち回り」を演じずに済むのか。山内氏にそうさせない意味でも、建築工事の工程管理の徹底や利益率向上がポイントになってくるだろう。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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