大成建設「元会長の大立ち回り」が映す将来不安 「新宿西口再開発」など超難工事でも利益を出せるか
騒動を前に相川社長は終始冷静だった。そして静かに、次のように応答したという。
「会社の利益だけを重視するのではなく、われわれが求めているのは、顧客に対する新たな価値の創造や社員・お取引先の1人ひとりが活躍できる職場環境の実現です。(山内氏の発言内容は)われわれが目指すマテリアリティー(重要課題)とは違います」
市場関係者は「相川社長は『水掛け論』には持ち込まなかった。落ち着いていた」と振り返る。山内氏は最後は席に着いて、おとなしくしていたそうだ。
この総会後、山内氏は名誉顧問の職を外された。「もう大成建設とは関係のない人」「部外者」と、市場関係者は素っ気ない。
怒りを招いた業績は改善の途上
山内氏を知る人々の間ではその性格の熾烈さが知られている。
会長になってからも全国各支店を回り幹部と面談。幹部との間で取り交わした施策やエンゲージメント(約束)をノートにびっしりと書いていた。「そのノートに書き込まれたことは絶対に遂行しないとやばい。『デスノート』と恐れられていた」(大成建設の中堅社員)。
株主総会での指摘には頷けるところもある。一方で「山内氏の厳しい姿勢が(社内の硬直化といった)弊害を起こした側面もある」(同)との声が聞かれる。
山内氏が怒りの声を上げた原因となった業績には改善の兆しがみられる。
2024年度は売上高1兆9900億円、営業利益870億円と増収増益を見込む。2023年度は都内の建築工事で多額の工事損失引当金を計上し、営業利益が264億円だった。直近ピークの2017年度1818億円から8割減の水準に急降下していただけに改善幅は大きい。
11月の中間決算時には純利益の上方修正を行った。従来計画の650億円から830億円へ大きく上振れする見通しだ。政策保有株の売却益を特別利益として計上したことが寄与する。
この状況を株式市場は好感した。しかし、決算をつぶさにみるとけっして楽観視できる状況ではないことがわかる。
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