ジム・ロジャーズ「日本経済は歴史的に見て異常」 人口減少と負債増加が同時に起きているヤバさ
さらに日本は巨額の財政赤字を抱えている。この赤字を、誰が返すのか。こちらも各種社会保障と同じく、現役世代の労働者だ。つまり人口減少、特にお金を生み出す生産年齢が減っていることに加え、負債は増え続けている。この2つが同時に起きている日本は、致命的としか言いようがない。
また、いくら海外からの投資を呼び込んだとしても、それを活用する人材がいなければ長続きしない。このように日本は非常に深刻な問題を抱えており、適切に対処しなければ、40年後、50年後には日本の存在自体が危ぶまれると私は危惧している。
英国病とまで言われたイギリス
このように国が衰退していく状況も、歴史を学べばわかる。ポンドが急落したイギリスの事例だ。イギリスは産業革命を最初に達成した国であり、かつては世界の工場と言われ大繁栄した。
だが、第2次世界大戦後の1960~1970年代にかけて、長きにわたり経済が停滞。フランス、ドイツ、そして日本と次々と他国に抜かれていき、そのような状況を揶揄してヨーロッパからは「英国病」とまで言われた。
工業生産力の減退、輸出の減少、国民の勤労意識の低下、慢性的なインフレ、階級制度、保守的な教育、労働組合のスト頻発など、経済停滞の要因はいろいろと議論され、どれも関係していたと思われる。
中でも私が注目している、日本の状況と似ていると思うのが、労働者が不足しているにもかかわらず、ゆりかごから墓場までと言われるほどの、高度な社会保障制度が整備されていた点だ。
当時のイギリスは石炭や電気、ガス、鉄道や運輸、自動車といった基幹産業を国有化することで産業を保護しようとの政策を行った。ところが、国有化したことで企業は経営努力を怠るようになってしまう。
設備投資を積極的に行わなくなり、他の企業と競争することもなくなった。結果、イギリスの工業製品の品質や魅力は低下していき、国際的競争力を失い、貿易収支は悪化していった。
加えて、国民全員が健康保険に加入し、全員が無料で医療サービスを受けることのできる、社会福祉政策ならびに制度の整備を進めていた。
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