ジム・ロジャーズ「日本経済は歴史的に見て異常」 人口減少と負債増加が同時に起きているヤバさ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

先の日本の社会保障制度でも述べたように、このような制度を維持するには、膨大な資金が必要だ。ところがイギリスは、第2次世界大戦のときに行った膨大な支出による財政状況の悪化から回復しておらず、イギリス政府にはそのような制度を推し進める資金が足りなかった。

ついにイギリスは1976年、国際金融の安定化や各国中央銀行の取りまとめなどを行うIMF(International Monetary Fund/国際通貨基金)から、融資を受ける事態にまで追い込まれる。

イギリスが復活できて、日本にできない理由

ただイギリスは、そのまま沈没することはなかった。1979年に首相に就任したマーガレット・サッチャーが、政策を転換。「小さな政府」を掲げ、国営企業を民営化するなどして歳出を削減。さらには、北海油田の開発を進めるなどして復活を遂げていく。

北海油田とはイギリス、ドイツ、ノルウェーなどの国に囲まれた、ヨーロッパ大陸の北、スカンジナビア半島の西あたりに位置する北海と呼ばれる海の海底に点在する、大規模な海底油田である。

「日銀」が日本を滅ぼす 世界3大投資家が警告する日本の未来 (SB新書 677)
『「日銀」が日本を滅ぼす 世界3大投資家が警告する日本の未来』(SB新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

発見されたのは1960年。現在では周辺の多くの国が開発に携わっているが、最初に乗り出したのが、イギリスだった。そうしてイギリスは、石油の自給と輸出という事業を手に入れることになったのである。

だが日本には、イギリスにとっての救世主であった世界最大の油田を発見するようなことは起こりそうにない。北海油田の発見ならびに開発は、宝くじに当たるようなものであり、奇跡的な出来事だからだ。

さらに言えば、仮に北海油田のような宝くじを日本が当てたとしても、1度や2度では現在の状況を根本的に改善することは難しいだろう。日本が現状抱えている課題、日銀が35年近くにわたり行ってきた金融緩和政策は、それほどの大きな負債を、日本に背負わせたと私は考えている。

ジム・ロジャーズ 投資家、ロジャーズホールディングス会長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Jim Rogers

1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立し、10年間で4200パーセントという驚異的なリターンを上げる。37歳で引退した後、コロンビア大学で金融論を指導する傍ら、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍。2007年よりシンガポール在住。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。 主な著書に『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見』(日経ビジネス人文庫)、『危機の時代』(日経BP)、『ジム・ロジャーズ 大予測』(東洋経済新報社)『大転換の時代』(プレジデント社)がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事