国際金融センターとなったイギリスから、同じ島国である日本が学べることは多い。浅井氏は、日本の金融政策や産業構造の「供給過剰」が引き起こす弊害を問題視する。そのうえで「日本は未来の種を持っている」と語る、その理由とは。
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日本が選ばれないのは「税率が高いから」じゃない
――浅井さんはロンドンでヘッジファンドを立ち上げ、4兆円もの資金を運用する規模に育てました。債券を運用するヘッジファンドとしては突出した規模で、今後も浅井さんほどの成功をおさめる日本人はこの業界に現れない、という声も国内の金融界にあります。
いち銀行員だった僕がトレーディングの世界に足を踏み入れ、キャプラを立ち上げた過程には、銀行員時代の複数の先輩による助言の影響が大きい(本連載の2回目に詳細)。人生の大きな節目ごとにありがたい助言があり、目に見えない力に背中を押されるようにしてここまで来た、というのが実感です。
そしてもうひとつ僕にとって幸運だったのは、「イギリスにいる」ということ。ヘッジファンドの世界でフロントランナーであり続けるのは、日本人としては異例かもしれません。しかしロンドンでは、日本人が大きなヘッジファンドを運営していても何ら違和感を持たれません。
ロンドンでは日本人であれ何人であれ、市場のルールを理解する人であれば誰でもプレイヤーになれる。「私たちがルールを作り、世界最高の土俵を整備します。皆さんはここに来て、規律を守りながら思う存分プレイしてください」というのがイギリスのやり方です。会計や行動指針、倫理面など金融ビジネスをめぐるあらゆるルールや行動規範が、わかりやすく示されていますし、誰に対しても厳格に運用されています。
いわゆる「ウィンブルドン現象」ですね。テニスのウィンブルドン選手権と同様、イギリスが提供する最高峰の大会で、戦うのは世界トップクラスの外国人プレイヤーであるという状態です。金融という極めてグローバルな産業においてロンドンがセンター、つまり中心であり続けられるのは、この都市のルールが誰に対しても公正なものだから。それがロンドンで20年あまりやってきた実感です。
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