グランカブリオが「マセラティの象徴」たる理由 GT+カブリオレ=クルマ好きの贅沢のすべて
マセラティを以前から好む人には、戦前の同社のスポーツカーを連想させるボディデザイン(胴体と独立したフェンダーがあるようなイメージ)をはじめ、路面に擦りそうなほど低いノーズ、素材や色づかいで濃厚と表現したくなるインテリアが、グランカブリオの魅力と映るだろう。
自動車の用語では“歴史的引用”などというが、1914年に創業して戦前はレース、戦後は特にアメリカの富裕層向けにスポーツカーを手がけてきたマセラティだけに、ボディのいろいろなところに、引用元を連想させる要素をもりこんでいる。
それに、長い時間をかけて、クルマ好きの頭の中に染みこんだイメージもあるだろう。たとえば、私なら学生時代に読んだアメリカの作家、トム・ウルフの小説『ザ・ライト・スタッフ』がある。
宇宙飛行のマーキュリー計画に取材したノンフィクションが、この作品。宇宙飛行士のウォリー・シラーが、フロリダ州のケープカラベラルにある、レンガの硬く乾いたココビーチの砂浜で、「マセラティ(3500GT)を乗りまわすのを楽しみにしていた」という記述がある。「お金があって運転が好きな人が乗るクルマなんだなぁ」と、印象深かった。
ちなみに今回取り上げたグランカブリオは、トロフェオというモデルで日本国内では3120万円のプライスタグをつける。フェラーリ「ローマスパイダー」と変わらない価格なのだから、やはり「お金があって運転が好きな人が乗るクルマ」なのである。
変わらずにいてほしいマセラティのコア
これからマセラティ ジャパンは、“ハイパーターゲティング”という手法で拡販を狙うとする。
「ターゲットとなる富裕層にピンポイントで車両を見て試乗いただく機会を、東京を中心とした主要都市で行っていく戦略をとっています。マセラティ=グラントゥーリズモ(一般的な意味でのGT)であることを知っていただき、よりブランドイメージを強固なものにします」とは、広報担当者の弁だ。
たしかに、グランカブリオに乗っていて、クルマ好きを魅了してきたマセラティのよさを体感できた。それをコアとしてクルマづくりを続けているマセラティには、安易に(?)SUVに流れてほしくない、と勝手を承知で願うのである。
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