「AIシフト」がもたらしたインテルCEOの退任劇 半導体産業の構造変化がもたらす地殻変動

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彼らの事業はソフトウェアの互換性、コンピュータハードウェアの産業構造などにも助けられ、盤石のものであるとかつては考えられていた。しかし事業環境は変化し、インテルは未来への成長を描けないまま、先端半導体の技術開発での存在感を失っていた。

この状況を打破するため、かつてインテルのエースエンジニアであり、上席幹部であったにもかかわらず社外に転出していたパット・ゲルシンガー氏がインテルCEOとして復帰したのは2021年のことだった。

ゲルシンガーの野心と戦略の限界

ゲルシンガー体制下で進められたのは、最先端の半導体製造技術の技術開発と大規模な生産工場を持ち、その工場の能力を生かして優位性のあるチップを高付加価値で販売することで、市場を支配していたインテルのビジネスモデルを現代の市場環境に適応させることだった。

この戦略はIDM 2.0と呼ばれ、「5N4Y(4年で5世代分の技術革新)」と名付けた積極的な技術への投資、Intel Foundry Services(IFS)を通じ自社工場の生産能力を外部顧客向けに提供するファウンドリ(委託生産)事業の展開による稼働率向上、そして自社製品の生産における外部ファウンドリの活用という3つの柱からなっていた。

しかしこの戦略には大きな痛みが伴う。

巨額の設備投資は財務を圧迫し、先端技術の開発にかかる時間やリソースは予想を超えがちだ。競合のTSMCも同時期に同様の技術開発を進めており、技術的優位性を確保することも難しい。

インテルは第3四半期に166億ドル(約2兆5000億円)という巨額の赤字を計上し、かつて60%前後で推移していたグロスマージンは18%まで急落した。

IDM 2.0に修正を加えながら最先端の半導体製造におけるリーダーへと復帰すれば、あるいは戦略をやり切ることもできたかもしれない。しかし、今回の退任劇からわかるのは、インテルの株主はゲルシンガーの戦略を支持できなかったということだろう。

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