この日、ギリヤークさんの黒子を2016年から務めている紀(きの)あささんも同席した。大道芸人・写真家として活動している紀さんは、公演のときだけでなく、身の回りの世話や活動のサポートもする、マネージャー的な存在である。
大道芸人の大先輩としてギリヤークさんを尊敬し、2013年に各地の公演に同行。撮影した写真集を出版するなど、長くて濃密な時間をともにしてきた。黒子をすることになったのは2016年からだという。
「2015年の夏にギリヤークさんの体調が悪くなって、2016年は一度も公演ができなかったんです。大道芸というより、もう立ち上がれないんじゃないかというほど悪化して。
でもギリヤークさんは、まだ踊りたいっていう気持ちを持っていらっしゃった。『車いすでどうですか、私は黒子の衣装で』と相談したら、ギリヤークさんが納得してくださって。そこから先は一緒に、車いすで公演をするようになりました」(紀さん)
聖地・新宿の三井55広場で見せた踊り
ギリヤークさんの魅力はどんなところだろうか。紀さんは、簡単な言葉にするとウソになりそうな気がしますが、と前置きしたうえで、「伝説」と呼ばれてメディアに多々取り上げられる存在になっても、つねに等身大で生きているところだと話す。
「身体の調子が悪くて悩んでいるときも、ご飯が美味しくてニコニコしているときも、飾らないまっすぐな方なんです」と笑顔で続けた。
弟の光春さんにも、ギリヤークさんのすごさを聞いた。安土桃山~江戸時代にかけて活動した女性芸人で、歌舞伎の創始者とされる出雲阿国の名を挙げ、光春さんは「彼も大道芸のひとつの形をつくってきた」とギリヤークさんを評する。
「ああいう踊りをすることが、彼の人生の目的だったんじゃないかな。前世は舞踊家だったかわからないけど、やっぱり同じような道を歩んできたのだろうな。そして今生もそういう生き方をしている。だから、自分の魂や心が知っているんだよね、どうすればいいかっていうのを」(光春さん)
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