ノンフィクション作家が実践「本の構成」の決め方 取材で集めた"素材"をどう組み立てているのか

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まず私は先ほど述べたような大ストーリーを設定した。次にすべきは、大ストーリーに沿って、取材で集めた小ストーリーを選ぶことだ。取材をした相手1人につき4〜8個の小ストーリーを聞き取っていたので、それらをすべて紙に書き出した。

たとえば、釡石市長であれば、「市長になった経緯」「遺体安置所や緊急対策本部の設置」「国の土葬の指示と市民への通達」「他県の火葬場の借用」、お寺の住職であれば、「遺体安置所への慰問」「仏教会の設立と遺体安置所での読経ボランティアの開始」「身元不明の遺骨の引き取り」などと記した。

小ストーリーの刈り込みと整理

『本を書く技術 取材・構成・表現』書影
『本を書く技術 取材・構成・表現』(文藝春秋)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

このように書き出して、大ストーリーに照らして俯瞰してみると、小ストーリーの中でも必要なものとそうでないものとが見えてくる。

市長の「市長になった経緯」の小ストーリーは、災害ルポとしての大ストーリーとしては無関係だから省こうとか、住職の「遺体安置所への慰問」と「仏教会の設立と遺体安置所での読経ボランティアの開始」は1つにまとめられるといったように、だ。

インタビューで得た小ストーリーをすべて使うことはできないので、使えないものは刈り込み、使えるものを残して整理する必要がある。この段階では、集めた小ストーリーの3分の1くらいは切り捨てるくらいの覚悟を持つべきだろう。書き手は多くを語りたがるものなので、切るか切らないかで迷ったら、切るのが正解だ。

これらの構成術を発展させて、時間軸から自由になる新スキルは『本を書く技術』を参照してほしい。

石井 光太 作家

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いしい こうた / Kouta Ishii

1977年、東京都生まれ。海外の最深部に分け入り、その体験を元に『物乞う仏陀』を上梓。斬新な視点と精密な取材、そして読み応えのある筆致でたちまち人気ノンフィクション作家に。近年はノンフィクションだけでなく、小説、児童書、写真集、漫画原作、シナリオなども発表している。主な作品に『絶対貧困』『遺体』『43回の殺意』『「鬼畜」の家』『近親殺人』『こどもホスピスの奇跡』(いずれも新潮社)『本当の貧困の話をしよう』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』『教育虐待: 子供を壊す「教育熱心」な親たち』など。

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