ノンフィクション作家が実践「本の構成」の決め方 取材で集めた"素材"をどう組み立てているのか
まず私は先ほど述べたような大ストーリーを設定した。次にすべきは、大ストーリーに沿って、取材で集めた小ストーリーを選ぶことだ。取材をした相手1人につき4〜8個の小ストーリーを聞き取っていたので、それらをすべて紙に書き出した。
たとえば、釡石市長であれば、「市長になった経緯」「遺体安置所や緊急対策本部の設置」「国の土葬の指示と市民への通達」「他県の火葬場の借用」、お寺の住職であれば、「遺体安置所への慰問」「仏教会の設立と遺体安置所での読経ボランティアの開始」「身元不明の遺骨の引き取り」などと記した。
小ストーリーの刈り込みと整理
このように書き出して、大ストーリーに照らして俯瞰してみると、小ストーリーの中でも必要なものとそうでないものとが見えてくる。
市長の「市長になった経緯」の小ストーリーは、災害ルポとしての大ストーリーとしては無関係だから省こうとか、住職の「遺体安置所への慰問」と「仏教会の設立と遺体安置所での読経ボランティアの開始」は1つにまとめられるといったように、だ。
インタビューで得た小ストーリーをすべて使うことはできないので、使えないものは刈り込み、使えるものを残して整理する必要がある。この段階では、集めた小ストーリーの3分の1くらいは切り捨てるくらいの覚悟を持つべきだろう。書き手は多くを語りたがるものなので、切るか切らないかで迷ったら、切るのが正解だ。
これらの構成術を発展させて、時間軸から自由になる新スキルは『本を書く技術』を参照してほしい。
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