ノンフィクション作家が実践「本の構成」の決め方 取材で集めた"素材"をどう組み立てているのか

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大ストーリーを考える時、参考にしたいのが演劇の脚本を作る時などによく用いられる基本構造「三幕構成」だ。劇の全体の内容を3つに分けて、それぞれに次のような役割をつけるのだ。

1 設定(20%)
2 対立・葛藤(60%)
3 解決(20%)

序盤である1の箇所で物語世界を示しながら登場人物の特徴を説明し、中盤である2の箇所でそれらの対立、ないしは葛藤が起きて緊張感が高まる。そして、終盤の3に差しかかったところで解決に至るという流れである。分量の比率は、カッコ内の通り。1と3を短めにし、2にボリュームを持ってくる。

なぜこれが基本構造とされているのかといえば、ストーリーの肝が鮮明になるからだ。あえて展開を変えるとか、比重をずらすこともできるが、書き慣れている人は別にして、新人やセミプロの場合は、まずはこれを意識して大ストーリーの流れを考えた方が無難だろう。

ノンフィクションの基本法則

ただ、ノンフィクションを書くことにおいては、三幕構成と共にもう1つ念頭に置いてもらいたいことがある。冒頭で紹介したノンフィクションの基本法則だ。次の流れである。

〈事実→体験→意味の変化〉

演劇の脚本はフィクションなので1〜3をゼロから想像力で作り上げなければならないが、ノンフィクションの場合は取材によって手に入れた情報がすでにある。したがって、三幕構成の3つのステップを、ノンフィクションの基本法則のステップに重ね、何をどこに配置すればいいのかを考えれば、よりスムーズになるはずだ。

(『本を書く技術 取材・構成・表現』より)

具体的に、私の『遺体』という作品で考えてみたい。

これは、東日本大震災で被災した釡石市を舞台にした作品だ。同市では1000人に及ぶ死者・行方不明者が出て、犠牲者の亡骸は急設された遺体安置所に運ばれた。あまりに悲惨な空間となった遺体安置所だったが、そこに地元の医師、歯科医、民生委員、僧侶などが集まり、遺体の泥を落とし、祈り、身元確認をし、遺族の元に返そうとする。そんな2カ月間を追ったルポだ。

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