軍事のプロ解説「公開情報だけで分析する方法」 米露の情報機関も9割以上は公開情報を元に分析
大本営発表のウォッチ、つまりOSINTには、それでも意味があります。その理由の第1は、情報にはどうしても隠しておけないものがある、ということです。
よく噓八百の代名詞みたいに言われる大本営発表ですが、実際には全くの噓ばかり書いてあったわけではありません。勝っているときには戦意高揚のために大々的に事実を公表しますし、負けているなら負けているなりに、ある程度はその事実を認めないと誰も政府を信用しなくなってしまいます。なにしろ連日のように日本本土が空襲を受けていたわけですから、これで「連戦連勝」というのは無理があるというものです。
問題はその「ある程度の事実」をどうやって深読みするかなのです。
情報の傾向の変化を見る
第2に、個々の情報はアテにならないとしても、その傾向の変化を見るというアプローチがありえます。
現在のウクライナ戦争を例に取りましょう。ウクライナとロシアの参謀本部は双方とも戦況を定期的に報告しています。これらの公式発表をずっと追っていくと、「最近になって戦果の報告が増えている。本当にこれだけ勝っているかどうかは別として、戦線での戦闘が激しくなっているらしい」ということがわかったりするわけです。
これは公刊情報を個別に扱うのではなくて、一種のメタ情報として扱うアプローチですね。前述した深読みとは逆です。相手の言っていることを一旦真に受けて、その通りに表計算ソフトなんかに入力していく。するとそこに一定の傾向が見えてきたり、あるいは全くでたらめばかり言ってるんじゃないか? という疑いが生まれてきたりします。
第3に、情報の中には隠しておいたら無意味になる、という種類のものがあります。
スタンリー・キューブリックの映画『博士の異常な愛情』に、こんなシーンがあることを覚えている方もいるでしょう。ソ連には、アメリカの核攻撃に対して自動的に報復を行う兵器(世界破滅マシーン)がある、というソ連大使に、ストレンジラブ博士がこう詰め寄ります。「そんな兵器が存在するなら公表しなければ意味がない。なぜ隠していたのだ!?」
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