2029年に最低賃金1500円は「余裕で可能」な根拠 最賃の引き上げは「宿泊・飲食、小売業」の問題

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次に、日本企業の利益などと比較して、この負担がどれほどのものかを評価していきましょう。

「全企業」「中小企業」それぞれの負担感は?

毎年の1.4兆円分を、2023年度の『法人企業統計』にある全規模の企業データ(金融を除く)と比較してみます。

付加価値は340.3兆円なので、1.4兆円はその0.4%です。人件費は197.6兆円なので0.7%、営業利益は75.6兆円なので1.9%、経常利益は106.8兆円なので1.3%に相当します。このように見ていくと、最低賃金引き上げによる1.4兆円の追加負担は、それほど大きな負担とは言えません。

さらに、企業の利益は毎年同じなわけではなく、近年は継続的に最高水準を更新しています。2023年度の経常利益は2022年度比で11.5兆円も増加しているため、1.4兆円の追加負担は何の問題にもならない計算です。

当然ながら、利益総額には利益率が高い大企業も含まれているため、中小企業の実態とも比較する必要があります。

最低賃金で働く人がすべて中小企業に従事しているわけではありません。さまざまなデータによれば、大企業に勤める最低賃金の労働者は全体の約2割だと見込まれます。したがって、1.4兆円の8割、1.1兆円が中小企業の負担となります。

中小企業の付加価値164.3兆円に対する割合は0.7%、人件費117.8兆円に対しては0.9%、中小企業の営業利益16.6兆円に対しては6.6%、経常利益25.4兆円に対しては4.3%です。2023年度の経常利益増加分2.6兆円に対する最低賃金増加分の割合は42.3%に相当します。

では、1500円に引き上げられたときの負担増、7.1兆円の場合はどうでしょうか。

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