中国が監査で覇権掌握、日本なすすべなし? じわり増すビジネスリスク、米国も屈した

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また、今年7月には「会計事務所が従事する中国内地企業国外上場監査業務暫定規定」が誕生した。この規定では、国外上場の中国企業を監査する海外会計事務所には、先ほどの許可の取得に加え、中国国内の会計事務所との合同監査が義務付けられた。つまり、国外事務所による単独監査を禁止したのである。

この新規定誕生で、既存規定の運用が強化される可能性を懸念し、PwCあらたでは「臨時許可の取得も視野に入れた対応を検討している」という。顧客の中国子会社の監査は、現地PwCのスタッフに委託しているとはいえ、日本の会計士がいっしょに現地工場を回り、質問をすればそれが監査業務だと言われる可能性が否定できないからだ。ちなみに、日本の4大監査法人のうち、問題意識を持ち、「対策の必要性を認識している」と筆者に明確に回答したのはPwCあらただけだった。

金融庁は「コメントできない」

現在、中国では新たに国内会計事務所に対し、対外的な監査書類の提供を原則禁止する「会計事務所監査管理暫定弁法」の制定も予定されている。8月15日にパブリックコメントの募集が終了しており、これから制定作業に入る。最終的にどうなるのかは不明だが、「規制強化の流れが反転する可能性はほぼない」(前出の海外監査に詳しい公認会計士)。

すでに、中国の会計事務所が日本の監査法人と共同で作成した資料を日本の監査法人が入手するには、中国政府の許可が事実上必要になっている。そこへ、中国の会計事務所単独で監査した場合にも網をかけようとしていることになる。中国子会社で突如巨額の損失が発生しても、事実の解明すらできなくなる可能性をもはらむ。

金融庁の態度はなんとも煮え切らず(kpw/PIXTA)

中国の法規制は、国内企業に海外上場のメリットを享受させる一方で、市場参加者が果たすべき義務の履行を回避させる効果を持つ。世界は中国企業の海外上場がもたらす恩恵を無視できない。中国企業にのみ特例を認めれば、世界中の資本市場の秩序は崩壊する。

公認会計士・監査審査会に対策を聞いたが、「外国の法規制のことでもあり、コメント出来る立場にない」という回答だった。だが日本の監査制度に甚大な影響を与えるかもしれない今回の事態。コトは民間組織でしかない会計事務所や企業の次元を超えている。各国当局との連携も含めた対応が必要なはずだ。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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