「本心」描く"故人を蘇らせるAI"は実現可能なのか 母親が蘇って、知らなかった側面が明らかに
――イメージとしては単純労働をAIに任せておけば、その間、人間はクリエーティブな作業をすればよい。だから大丈夫、という論調もあったと思うのですが。医者のような専門職であってもそういう未来が?
もちろんAIが代替するのは医者が行う仕事の中でシンプルなタスクからでしょう。たとえばまずは軽傷かどうかを先にAIがチェックして、判断の難しいケースは人間の医者が時間をかけて見るようになる。
今までの産業革命では、まずは1次産業のほうに影響がありました。手で布を織る、シャベルで穴を掘る、というタスクが技術の進化により機械化されました。しかし今回は机に座って行うタスクに最初に影響がある。これは人類が今までに経験したことがない事態なので、だからこそみんなで考えなきゃいけない。
――AI研究というのは、いわゆる技術的なことだけを研究しているようなイメージがありましたが、実際はそれだけでなく、倫理や哲学、法律など、人間の営みのことも考えながら技術を研究していかなきゃいけないということなのでしょうか。
まったくその通りですね。
AIも大規模な国際組織が必要
――研究者の方はそこをどう捉えているのでしょうか? これはしていいことですよ、いけないことですよ、といった倫理的なことの共通認識はあるのでしょうか?
ChatGPTが登場するまでは、技術と倫理の関係を専門に研究している人以外は、そういうことが必要になる日はなかなか来ないだろうと。しかしChatGPTが登場してからは、たとえば政治家の方や役所の方、そして一般の方たちが、これは考えなくてはならないことだと気付いたわけです。
2023年5月に行われた、G7広島サミットでの広島AIプロセスの提唱をはじめとして、アメリカ政府やイギリス政府、国連といった大きな国際団体が、倫理的な面もふくめて、どうやってルールを作るかということを話し合う委員会をつくり、議論をはじめています。
たとえば国連では、核技術の平和的利用の促進と原子力の軍事利用の防止を目的としたIAEA(国際原子力機関)という組織を運営していますが、AIに対しても、それぐらいの規模の国際組織をつくらないといけないのでは、ということになっています。
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