「本心」描く"故人を蘇らせるAI"は実現可能なのか 母親が蘇って、知らなかった側面が明らかに

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――生前のパーソナルデータをAIに集約させて、仮想空間上に"人間"を作るVF(ヴァーチャル・フィギュア)という技術で、亡くなった母親をよみがえらせるというのが本作の物語の骨子となるわけですが、そもそもこの技術は実現可能なものなのでしょうか?

この原作が書かれた2019~2020年の時点ではSF的な要素もいくつかあったはずなのですが、この数年間で技術が急激に進化し、原作の世界に追い付いてきました。だから原作が登場した時点で感じるSFっぽい感覚と、2024年に映画で見たときにおけるリアルな感覚とでは、違いがあるのではないかと思います。

中国ですでに、生成AIにより亡くなった方を再現するサービスが提供されているように、実現に必要な要素技術は出揃っていると言えます。

劇中で母の筆跡やメールのやり取りなどをAIに学習させるシーンがありますが、今現在の技術であれば、大体1000件のいいデータがあればお母さん風に寄せることが可能です。後はそこに視覚だけでなく聴覚や触覚を加えられるかどうか……という話でしょうね。

人間に近い存在をつくるのが1つの目標

――その進化というのはChatGPTの登場もありますか?

そうですね。おそらくいちばんわかりやすいのはChatGPTの登場だと思います。ChatGPTが登場したのは2022年11月の末のことですが、あの日を境に一気に変わった。そして特にこの2年間の技術の進化がさらに加速しています。

本心
朔也の母・秋子役に田中裕子。生身の母と、VFとして復活した母という、境界線があいまいな2役をしっかりと演じきっている。(C)2024 映画『本心』製作委員会

――AIのテクノロジーというのは日進月歩の世界ではないかと思うのですが、AI業界のトレンドはどんどん変わっていくものなのでしょうか?

いえ、むしろ逆に目標はシンプルです。それこそこの映画でやりたかったこと、人間に近い存在をつくり出すことがひとつの目標だと思います。

たとえばちょっと前だったら、通販サイトの問い合わせのチャットなどでも、明らかにAIだというのがバレバレだったじゃないですか。けれどもこの2年間で技術は進化してきた。

ChatGPTが登場したときが大学1年生くらいだとしたら、最近出た最新版のChatGPTだと、もう博士号を持っていてもおかしくないくらいにまで進化しています。カーテンで隠してしまえば、自分の問いかけに答えているのが人間なのか、AIなのかどうかを見極めるのは難しいかもしれない。そういうところまで人間に近づいてきていると思います。

――そこまでですか。

だから最新版のChatGPTが出て、アメリカの医者たちは、俺たちの仕事がなくなるぞとざわついています。大きな病院に行ったら、半分はAI医師だったということになっても、全然不思議じゃない。

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