このように見てくれば、失われた30年と言われる1995年から現在まで、政府の経済政策が効果を上げなかったのは当然だったのである。やり方が間違っている、あるいは、やっていることを単にアピールだけするために、短期の経済政策規模を何十兆円と膨らませたり、現金をバラまいたりと、経済発展をそもそも目的としてない政策ばかりを行ってきただけなのである。
では、どうしたらいいのか。短期の需要サイドも中期の供給サイドも政府の出番ではもはやなくなっている。民間セクターに任せるのがベストなのだ。
政府がすべきなのは「質の高い義務教育インフラ整備」
では、政府は何をするべきか? もちろん、社会資本の蓄積である。政府が誕生し、最初に行うべきことは、社会基盤を作ることである。政府が生まれたときから社会資本の蓄積は重要で、21世紀になってさらにその重要性が高まったのである。
つまり、民間セクターが発達し、経済政策に関しては、足りないものがなくなった。しかし、一方、社会資本の蓄積が、経済規模に比して相対的に不足するようになり、21世紀には、それが国家間の違い、差をつける決め手になってきたのである。
上述の、現在行われているだめな経済政策と本当は必要な政策に関する一連の議論を見ても、短期、中期、長期のいずれにおいても、必要なことは社会資本の蓄積に集約される。
短期で行うべき経済政策とは若年層の失業対策に尽きる。つまり、若年層、学卒者に対して、社会的基盤を提供することが最重要なのである。中期の供給力も、労働者の人的資本の蓄積がすべてであるが、その支援の枠組みは、企業を通じるものではなく、個々人に直接働きかける仕組みが必要である。
そして、リスキリングの議論で見たように、現代の目まぐるしい変化、多様性に応じて、個々人が本人の判断とやる気で行うものである。政府が行うべきは、学び直しの機会ではなく、学び直しが必要なときに自分でできる、判断力、気力、好奇心、働く意欲を幼児教育、小学校、中学校のときに身に着けさせることである。
つまり、本人の心の中に基盤を作ることを助けるのである。このような基礎力を身に付ける質の高い義務教育のインフラを整備することである。これぞ、国家最大の社会インフラ、社会資本である。このような国民で構成される社会、国家は、素晴らしい社会であり、国家となるだろう。
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