――自分らしさがわからない、自分の人生をうまく選択できないという人たちは、こうあるべきという両親の言葉や社会圧に呑み込まれて抜け出せないのかもしれません。
でも自分のことがわからないというのも思い込みかもしれません。わからないという人も、日々、小さな選択はしています。たとえば、今日のランチは何を食べるかとかね。これも小さな自己決定だし、そこには自分らしさや自分の好きがきちんと反映されているはずですから。大切なのは、すべては自分が選んでいると自覚すること。そうしていくうちに、自分の個性や思考についても理解できるようになるんじゃないかと思います。
仕事は人生の一部でしかない
――では、幸せとキャリアについてはいかがでしょう。前編では高尾さんのキャリアについても伺いましたが、人生100年時代、やはりキャリアも「自己決定すること」が幸せのカギでしょうか。
もちろん。ただ、そもそも、人生=仕事じゃないですよね。そのときやっている仕事が楽しいという感覚を持てる人は幸せです。でも、そうじゃないとダメなわけじゃない。人生は長いから、キャリアが切れ目なく繋げる、働いてお金が入ってくる状態が続けば、確かに安心です。でも、それがイコール、幸せとも限らないですよね。
これからは、キャリアもますます人それぞれですよ。1つの仕事を終えてしばらく間を空けないと次に進めない人もいていい。肉体労働で頑張っていた人が年齢を重ねて、肉体労働ではない仕事も増やしながら、ゆっくり移行していくというのも理にかなっています。絶え間なく働かなければとか、仕事で輝き続けなくてはなんて思う必要はないです。
――その時々、自分らしい働き方ができていればいいということですね。
将来への不安、主に金銭的な不安があると、キャリアについて焦る人は少なくないと思います。でもお金だけに目が向いてしまうと、心が空っぽになっていくケースも少なくないです。
特に女性の場合は、仕事以外の役割がたくさんありますから。日々、生活を回すことだけでいっぱいいっぱいになって、いつの間にか、自分のしたいことをするというような感覚が薄れてしまう。
――子育てが大変な時期は特にそうかもしれません。
その仕事が自分の好きなことであればいいけど、そうではない可能性のほうがたいてい高いわけです。すると、仕事に重きを置きすぎると苦しくなるのは当然です。
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