本物の経営者は「嫌われる」ことを受け入れる ハイアール伊藤社長は、部下と食事をしない

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高校時代、野球部のキャプテンをやっていたこともあり、私はこうした体育会系のノリが、私のリーダーシップのスタイルだと思っていたのだが、実はそうではなかった。そのことに気がついたのは、40歳になってSPE(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)に入社したときだ。

当時のSPEの業績はどん底にあり、経営者のポジションで同社に参画した私に与えられたミッションは、過剰な人員を削減しつつ、事業を再生させることだった。少なくない数のリストラを今からするというときに、「みんな、俺についてこい!」というスタイルは通用しない。

リーダーシップのスタイルは、その人の性格や好みではなく、今いる状況や、与えられたミッションによって変わるのだ。

私は、性格的に言うと、みんなでワイワイやるのが大好きな人間だ。デル時代には、部署の旗を作って、みんなの名前と目標を書いてオフィスに張っていたほどだ。でもSPEに入り、日本代表に就任してからは、部下と親しくなることを極力避けた。お昼も、夜も、社内の誰とも食事に行かず、つねに独りでいることを徹底した。

なぜなら、一緒に食事をすれば、「この人と自分は気が合う」とか、「この人は今、家庭環境が大変だ」とか、情が移ることがあるからだ。そうした個々の事情を、経営判断に差しはさむわけにはいかない。だが、私も人間だ。そうしたことがわかってしまうと、知らず知らず、バイアスがかかってしまうかもしれない。

事業再生に必要な人は誰で、そうでない人は誰か。そのことを見極める際に目が曇っていては、プロ経営者として失格である。

情に流されてはいけないが、情を失ってもいけない

経営者は、好かれることと、嫌われることの両方ができて、初めて本物だ。一部門の管理職レベルであれば、「みんなに好かれるリーダー」でもうまくいくだろうが、事業や会社をまるごと管理するポジションに立てば、時には冷酷な判断をする必要にも迫られる。経営者になりたいのであれば、人気者になりたいとか、みんなに好かれたいという思いは捨てるべきだ。

役職が上になるほど、非情な決断にも迫られるし、心を鬼にして言うべきことを言う状況にも立たされる。肝心なところで情に判断を迷わされるようでは、経営者失格である。

ただし、情に流されてはいけないが、情を失ってはいけない。「人の気持ちに判断を左右されない」ことと「人の気持ちがわからない」ことは、まったくの別物である。そして、部下や社員は、それを見抜いているものであり、後者のリーダーには、誰もついてこないのだ。

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