ぶっ飛びハイアールに、日本が学ぶべきこと <動画>「好き嫌い」で家電を買う時代が来る

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白モノ家電の世界最大手・中国ハイアールの傘下で、日本と東南アジア地区を統括するハイアールアジア。6月に発表された新製品・開発中製品の数々が「ぶっ飛んでいる」と、各所で話題になっています。これに対し夏野剛氏は、「これはいまの日本メーカーに足りないものを浮き彫りにしている」と指摘します。

 

ハイアールアジア、家電製品で元気がいいですね。同社は皆さんご存知の通り、三洋電機の家庭用冷蔵庫や洗濯機の部門がいったんパナソニックに買収されて、その後2012年にハイアールに売られた、という経緯があります。ですからハイアールの白モノ家電の開発部隊は、ほとんど日本の方ということになりますね。

三洋の「アクア」というブランドの洗濯機は、もともとすごく評価が高くて、テレビのコマーシャルを覚えていらっしゃる方もいると思いますが、ぬいぐるみなんかを水を使わないで洗うという機能があって、うちの子どもたちにもものすごくウケています。

ハイアールアジアのスケルトン洗濯機

残念ながらパナソニックはその部分を要らないと思ったらしく、ハイアールに売ってしまったわけですが、今でもアクアブランドはハイアールのものとして残っていて、今回の発表会につながっています。

さて、ここでハイアールが出してきたのが、なんとスケルトン型洗濯機。スケルトンというのは、発想としてなくはなかったのでしょうが、作ろうとすると、これがなかなか難しいのですね。もちろん素材も、つなぎの部分も、けっこうきちんと作りこまないとできない。

でももちろん、日本の技術力があればできるわけです。ところが日本の経営者なら、こんなものの開発は絶対に「ノー」と言うとでしょう。ただ、ハイアールアジアの社長(日本の方ですが)、もともと三洋ではなく、むしろソニーの映画関連の部門にいらっしゃった方で、今回大胆にスケルトンの洗濯機を出してきました。

好きか嫌いかで買う商品が、市場を広げる

これはいまの日本メーカーに足りないものを浮き彫りにしていると思います。みんな横並びの開発をして価格競争に陥るというのが日本の家電メーカーさんのいつものパターンですが、まったく違う発想でスケルトン洗濯機なんて出されたら、これは横の比較ではなく、好きか嫌いかで買う人が出てくる。そういうところを狙うことで、他社にできない非常に大きなマーケットを作れる可能性があります。

この記事は週刊『夏野総研』とのコラボレーションでお届けします

ハイアールが同時に発表したのが、R2-D2型の冷蔵庫。これも趣味性が高いんですが、きちんと動きますし、しかも音声なども、細部までホンモノそっくりに仕上げている。冷蔵庫としての機能性も高いものになっています。

これも日本メーカーの技術があるからこそ作れる製品で、まあ「うちには要らないよ」という方がいっぱいいるとは思いますが、同時に「1台くらい買ってみようかな」と思う方もいっぱいいるはずなのです。

こういうものを作りたい、こういうものをやってみたい、こういうものを出したら面白いのではないか、という感覚が、日本の会社の経営者にはないように感じます。無難に市場調査をした結果をみて、無難に成功しそうなものを、無難な形で出す。こういう経営では、日本の家電メーカーの競争力はどんどんなくなる一方ですよ。

ということで、今後このハイアールアジアの動き、いちばん注視してほしいのは、ほかの家電メーカーの役員陣。「こういうものを出したい」という熱意を感じさせてくれないオッサンたち、きちんとハイアールアジアに学んでほしいと思います。

夏野 剛 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

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なつの・たけし

早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、08年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。


 

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