東京に「座るにも金が要る街」が増えた本質理由 疲れてもカフェに入れず途方に暮れるあなたへ
② 防犯意識の高まり
次に、防犯意識の高まりについて。これは、何も悪いことではない。しかし、それに伴って起きている事態が、結果的に私たちを苦しめている。排除アートの問題だ。
渋谷には、いわゆる排除アートやいじわるベンチと呼ばれるものが数多くある。これは、本来なら人が集まる広場に置かれた奇妙なオブジェや、ベンチに付けられた謎の突起物を総称してそう呼ぶ。「アート」と呼ばれてはいるが、実態としては広場に人をたむろさせなかったり、ホームレスがベンチで寝ることを防ぐ役割を持っていて、そこから「排除」という言葉が付けられている。
排除アートについて精力的に発言をしている建築史家の五十嵐太郎は、こうした排除アートの代表例として、渋谷マークシティの東館と西館の間にある「ウェーヴの広場」を挙げている。さらには、本文冒頭で私が見た、渋谷公園通りにある座りにくいベンチもこの1つだろう。これらは若者やホームレスがそこに滞留するのを避けるためのオブジェである。
五十嵐によれば、こうしたオブジェは1990年代後半から街で見られるようになったという。その理由を五十嵐は次のようにまとめる。
排除アートは、街の治安向上や、人々の防犯意識の高まりを反映しているのだ。
誰のための排除アートなのか?
特に渋谷に限っていえば、もともと1990年代あたりの渋谷は「ジベタリアン」の聖地ともいわれる街だった。もはや死語だが、ジベタリアンとは「地べたに座る人々」のことで、センター街を中心にそこらじゅうに若者が座ってたむろしていた。
この光景が変わり始めるのが、2003年あたり。当時の石原都政化で、新宿歌舞伎町を中心とした「浄化作戦」が行われ、クリーンな街並みが目指されていく。まさに人々の防犯意識の高まりを反映した政策だった。そして、それと連動する形で排除アートが増えてきた。
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