「当たり前に暮らせる」児童養護施設が目指すこと 地域に開いた実籾パークサイドハウスの挑戦

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ライフサポート寄付は、実籾パークサイドハウスがオープンしてから、当たり前の暮らしを実現・継続していくために使われる。例えば、前述した新品の下着・肌着の提供や、部活動や学習塾に参加できる環境、中高生のスマホの所持、大学への進学や海外留学など――現行の環境では充実が難しいことを、この資金を利用して実現しようとしている。

未来に向けた「実験的な試み」

児童福祉にまつわる分野はどちらかというと保守的であり、進取の取り組みに積極的なわけではない。そんな中にあって実籾パークサイドハウスは、かなり実験的な試みを取り込んでいるプロジェクトといえる。

「僕自身も手がけたことがない領域ですから、行っていく過程で遭遇する成功も失敗も含め、未来に向けた質の向上に生かしていきたいと考えています」という飯田さん。

公務員を辞めて福祉楽団に入った藤堂さん(写真:福祉楽団)

だが、児童福祉分野は人材不足が取り沙汰されており、施設スタッフの確保だけでなく、スタッフのケアや維持も課題となってくる。加えて、子どもたちに当たり前の暮らしを提供するには、国の補助金だけでなく、寄付の拡大など資金調達も重要になるだろう。

飯田さんによると、一時保護所に子どもがいられる期間は最大2カ月なうえ、つねにパンク状態にある。飯田さんが手がけるような養護施設のニーズは高く、行政からの増設への要望は強い。とはいえ、上述の通り、立地や資金、スタッフの確保などそう簡単にできるものではない。

高齢化が進む日本では高齢者が置かれている状況についての情報は多くあるが、虐待などを受けた子どもの暮らしや児童養護環境などについてはあまり知られていない。より多くの子が当たり前に暮らせるようになるには、まず社会の認識を深める必要があるのではないか。

川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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