好景気だと?米国在住者が語る「物価高の厳しさ」 NYの平均家賃は約80万円、夜の街も閑散

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そんな誰もが絶好調と信じてやまなかった2024年4月23日。シカゴの15店舗を含む全33店舗が経営不振により突然の無期限休業となることが発表された。

どうなってるの、アメリカ!~ニュース&カルチャーがぐっと面白くなるアメリカ最前線トピック30
『どうなってるの、アメリカ!~ニュース&カルチャーがぐっと面白くなるアメリカ最前線トピック30』(大和書房)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

顧客はもちろんのこと、従業員さえも寝耳に水で、多くのスタッフが当日の朝、いつも通り出勤した際に閉店の事実を告げられたという。本社は声明をリリースし、連邦倒産法の第7章、いわゆる「チャプター7」を適用すると発表した。

即日シカゴのローカル・ニュースで大々的に報じられ、改めて多くの人々がこの「好景気」に疑問を感じることとなった。

便利なコンビニ、フォックストロットなき後、公演後に空腹を満たすにはもはやファースト・フードしか選択肢がないが、今や人手不足で「ファースト」でもなければ、もはや安価でもない。インフレとともにハンバーガーの価格も高騰。我が家の近所のマクドナルドではビッグマック単体の価格が7.92ドル(1272円)まで上がった。

消費者は遠のき、批判も寄せられたことから、価格の変更を余儀なくされたマクドナルド社は2024年6月、「5ドルメニュー」の導入を発表した。マックダブルもしくはチキンサンドにポテト、ナゲット、ドリンクがついて5ドルというメニューは大幅な値下げを意味した。

マクドナルドの「5ドルメニュー」。ダブルチーズバーガー、フライドポテトSサイズ、チキンマックナゲット4ピースとドリンクのSサイズがセットになっている(写真:Lucia Buricelli/Bloomberg)

ウェンディーズやバーガーキングなど、他のファースト・フード・チェーンも同様のキャンペーンを行い顧客の呼び戻しをねらった。この価格変更が突破口になるかは今の時点では誰にもわからない。

実感のない好景気と、実感のある物価高

先日行われたテレビ討論会の中でトランプは、「インフレがこの国を殺そうとしている」と言い、バイデンは、「インフレ対策についてはまだまだやるべきことがある。まずは食卓の周りの身近なものの価格を引き下げなければいけない」と答えた。

今、こうしてマクドナルドの窓際の席に座って5ドルのセットを頰張りながら「好景気」に沸くアメリカの景色を眺めつつ、ひっそりと本書を書いている。はてしなく実感のないこの好景気と、どこまでも実感させられるこの物価高を、世界は本当に羨ましく見つめているのだろうか。

サク・ヤナガワ スタンダップコメディアン

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Saku Yanagawa

1992年生まれ。大阪大学在学中に単身渡米し、シカゴの名門コメディ劇団「セカンド・シティ」でデビュー。現在はシカゴの複数のクラブにレギュラー出演するほか、全米各地でヘッドライナーとしても公演。 2021年フォーブス誌「世界を変える30歳以下の30人」に選出。2022年にはアメリカ中西部で最大のコメディ・フェスティバル”World Comedy Expo”のプロデューサー、芸術監督を務める。著書に『Get Up Stand Up! たたかうために立ち上がれ!』(産業編集センター)、『スタンダップコメディ入門 「笑い」で読み解くアメリカ文化史』(フィルムアート社)。

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