「戻ってよかった」"出戻り転職"がうまくいくコツ 50代の「出戻り」が歓迎されたのには理由がある
(2)明確な目的意識
Dさんが会社を離れたのは、「スタートアップ企業を立ち上げた知人の社長を助けたい」という気持ちがあったからだ。もちろん長年お世話になった会社を離れるのはつらかったが、それ以上に社長の信念に心を打たれた。
単なる「居場所探し」ではなく、強い意志を持っていたことは、当時の仲間たちも理解していた。何度も話し合いの場を持ったからだ。
そして転職した企業を離れると決意した理由もまた明確だった。転職先は社長をはじめ、ほとんどの社員が20~30代で構成されていた。事業が順調に拡大し、技術の承継も十分に果たせたと考えたタイミングで、50歳を過ぎた自分がここにいてはいけないと判断したのだ。
この明確な目的意識が、周囲の理解を得ることにつながった。
(3)柔軟な姿勢
出戻り転職してからのDさんは、以前の地位や人間関係にこだわらず、新しい環境に適応しようと努めた。先輩面することなく現場に入って汗をかいた。若手社員にも積極的に声をかけた。とりわけ若手社員から感謝されたのは、スタートアップ企業で働く若者たちの考え方を伝授したときだ。
同世代の20代の若者たちが、どのように事業を成長させようと日夜努力したのか。その姿勢をランチ時などに、よく話して聞かせた。同じ職場の部課長たちからは、「大変刺激になる」「生々しい話が聞けてすごくよかった」と喜ばれた。
個人と企業の双方にメリットがある「出戻り」
私は経営者なので、会社側の人間として考えたら「出戻り」は基本的に大歓迎。一般的な採用よりも抵抗がない。
一方、自分が出戻り転職する側だったらどう感じるだろうか。どんなに技術力、経験値があっても、55歳という年齢を思うと正直なところ抵抗がある。やはり前職との関係性次第だろうか。
この考え方、受け止め方のギャップを埋めることができれば、さらに「出戻り採用/出戻り転職」は脚光を浴び、当たり前のものとなっていくだろう。個人と企業の双方にとって、大きなメリットがあるからだ。
もちろん、この転職を成功させるには慎重な準備と柔軟な姿勢が不可欠だ。特に50代以上の社員にとっては、謙虚で柔軟な姿勢を取り戻せるか、新しい価値を提供できるか、がカギとなるだろう。
キャリアに迷いを感じている50代の方々、そして人材確保に悩む企業の採用担当の方々。まだ「出戻り転職/出戻り採用」の経験がないのなら、その選択肢を前向きに検討してみてもいいかもしれない。
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