「路線バスの旅」が、ほぼ流行らない根本原因 バスは、観光客にはわからない部分が多い

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当時も乗り継ぎプランを立てるのに苦労したことは確かだ。たいていの場合、高速バスは対象外なので、一般路線バスをつないでいくのだが、一般路線は基本的に“足”が短いので、こまめに乗り継がなければならない。あるいはつなげるためにはジクザグに遠回りせざるをえず、時間がかかる割に先へ進めない、ということが多かった。

それでも曲がりなりに路線はつながっていったもので、当時持ち込まれた企画の中で「日本海沿岸を青森から平戸まで路線バスでつなぐ」というプランをつくったときも、どうしてもつながらず歩くしかなかった区間は確か3カ所程度だったと記憶している。

県境を越えるバス需要がない

ということは、当時は府県境をまたぐ路線も結構走っていたし、またいで走っていなくても、両側から来た路線同士が府県境付近でつながっていたということだ。ところが今、あらためて路線図などを眺めてみると、県境をまたぐ路線バスがかなりなくなっていることに気づく。1990年ごろにつながっていたのに今は途切れている県境は、たとえば福島県と栃木県の間、新潟県と富山県の間などである。

理由はある意味簡単で、県境を越えて路線バスに乗って行くような需要がなくなってしまったから路線が廃止、短縮されてしまったのである。多くの府県境はもともと文化圏や商圏の境目で、人の往き来はそれほど多くなかった(もちろん鳥取~島根県境や広島~山口県境のように例外はある)。このため、末端部を廃止してつながらなくなっても、それほど影響が大きくなかったともいえる。

沿線の生活路線確保のため市町村が代替バスを運行したとしても、自治体であるがゆえにギリギリ末端の集落までは行くが県境までは行かない、という設定になった。また、県境をまたぐ移動ニーズは双方の主な都市間を結ぶケースが多く、高速道路の発達によって、高速バスが運行されるようになると高速バスに移行したり、マイカーでの移動に変わったり、または鉄道が高速化されるとそちらに移行したりして、路線バスの必要性は縮小していった。

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