「路線バスの旅」が、ほぼ流行らない根本原因 バスは、観光客にはわからない部分が多い
過去20年ほどの間に、路線バスの利用者数は30~40%減少している。最も利用者が多かった1970年前後に比べると60%以上の減となっている。
これは大都市圏も含めた全国の数字なので、地方に限って言うと80%近くの減少、ここ20数年でも半減以下となっている。大きな理由は自家用車の普及に伴うマイカー利用への移行であった。
その結果、地方の路線バスの利用者はかなり限定されている。すなわち、免許年齢に達しない高校生以下の通学と、高齢者の生活移動が地方の路線バスの“お得意様”となっているのである。路線バスを乗り継ぐ旅番組を見ていてもわかることだが、現在のローカル路線バスは、昔も今も鉄道の駅が起終点になっていることが多いが、次に必ずと言ってよいほど立ち寄るのは地域の総合病院である。
今や日中のバス利用の主役となった高齢者の移動目的は、一に病院、二に買物である。“お得意様”の利用形態に合わせていった結果、病院を中心とした路線が多くなっているのである。
加速する路線バスの撤退
利用者が減少すれば当然運賃収入が減り、路線の収支は悪化する。かつては生活路線を廃止する場合は沿線自治体の同意を必要とした許可制だったが、2002年に法律が変わり、一定期間前に届け出れば同意がなくても廃止できる制度となった。
そのことだけが理由ではないが、ここ10数年ほど地方での路線バスの撤退が加速している。民間バス事業者が経営できなくなって撤退しても、それに移動を頼っている人がいる現実、また高齢化が進み、もともと路線バスがなかった地域でも移動に不自由する住民が増えている事実から、市町村が負担してバス路線を維持・確保したり、新たな巡回バスなどを走らせたりするケースも増え続けている。
自治体が運営しているバスには、普通のバスと同じようにバス事業者が運行して自治体が赤字負担をしているものや、市町村の自家用バスを使用して独自に走らせているものなどがある。
このように、現在の地方路線バスはかなりネットワークが分断され、各地域が独自に対応する形に変わっている。ということは、以前にも増してよそ者にはわかりにくくなっているともいえる。
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