「北朝鮮がロシア派兵」その情報に現実味はあるか 兵士1万2000人、砲弾800万発…北朝鮮はできるのか

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地方に限らず、2012年に金総書記が政権を握って以降、平壌市内の再開発や住宅建設などには必ず兵士たちが大量動員されてきた。これは経済の緩やかな回復を背景に、住宅供給など住民の日常生活の向上・福祉の充実を掲げてきたため、それを効率的に実現する手段として兵士たちを労働力として経済建設に回しているためだ。

さらに9~10月という季節は、北朝鮮農業では収穫時期を迎える。米や小麦、トウモロコシなど穀物生産量を増やすことは、今でも北朝鮮にとって最重要課題だ。農場では少しでも生産量を上げるため、農場員以外にも都市住民、さらには兵士を動員して収穫に集中させるのがつねだ。

こういう状況の中、1万人を超える兵士を選抜して外国へどのように送るのか。その具体策は、ウクライナ、韓国双方が明らかにした情報ではよくわからない。

兵器・装備ではどうか。

北朝鮮が平時に、軍需工場をフル活動して生産できる砲弾量は年間200万発だと、韓国の国家情報院が明らかにしたことがある。最近では、北朝鮮の兵器工場では生産ラインの自動化などが進められ、生産能力はさらに向上していると考えられている。

2024年6月、韓国の申源湜(シン・ウォンシク)国防相はアメリカメディアとのインタビューで、北朝鮮はコンテナ1万個、500万発相当の砲弾をロシアに送ったと指摘している。となると、北朝鮮の生産能力の2年分以上の砲弾を送っていることになる。当然、北朝鮮国内で配備・備蓄すべき砲弾量は相当なものになるだろう。

またアメリカ大統領府によれば、2022年のウクライナ戦争開始から2023年のほぼ1年間、ウクライナへ支援した砲弾数は100万発以上だという。ヨーロッパの支援国も年間100万発を目標としていたが、実際には半分しか供給できなかった。

ちなみに、日本の自衛隊が保有する砲弾数は、保有する弾薬量を155ミリメートル砲弾1個=50キログラムで換算すると約25万発規模となる。

砲弾など北朝鮮はどこまで製造できるか

ウクライナやアメリカからみると、このような規模感になるが、実際に北朝鮮の事情はどうか。

北朝鮮から聞こえてくる指摘を総合してみると、北朝鮮はロシアに砲弾などを送ることはできるが、はたしてロシアが満足できるような、あるいは満足できる戦闘ができるほどの十分な量の砲弾を送れるだろうかという声が強い。それは、ロシアのほうがはるかに軍事大国で軍事産業大国だという認識と現実があるからだ。

ロシアの砲弾生産数は、アメリカ・CNNの報道によると月間約25万発、年間で300万発以上を生産できるという。これはヨーロッパのウクライナ支援国全体の生産量の3倍以上となる規模だ。

もし北朝鮮がすでにコンテナで1万~1万3000個分の砲弾を送ったとし、韓国国防相が指摘したように500万発相当の分量だとすれば、北朝鮮の生産量も、在庫があったとはいえ相当な規模になる。現在、ウクライナの戦場では1日2万発の砲弾が必要だともされている。

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