しかも、北朝鮮兵士がこれまで経験してきた訓練や軍隊内の習慣もロシア軍とはまったく違う。仮に戦場に出ても、戦果が挙げられるほどの統制・管理ができるのかは未知数だ。
前出の軍経験者の脱北者らも、「北朝鮮人民軍は金総書記のための軍隊、朝鮮労働党のための軍隊であり、外国の指揮系統などまったく念頭にないし、自分たちがそうなるとの想定さえもない。ロシアから指図・命令されるという組織形態になることに、かなりの抵抗感があるのではないか」と指摘する。
ただ、工兵であれば戦場での作戦環境の改善、あるいは占領地域の復興には役に立つかもしれないという。これまで、兵士を送るよりも単純に労働者を派遣する可能性のほうが高いという指摘は、北朝鮮からも多く出ていた。
伐木工などすでにロシア沿海州で派遣してきた経験があり、労働者の取り扱いについては北朝鮮労働者との意思疎通や労働習慣、管理もすでに熟知しているためだ。今後、「労働者」の派遣が拡大する可能性は十分にあると北朝鮮とロシアの関係者は口をそろえる。
もし北朝鮮軍がロシアに派遣され、戦場の経験を積むという情報が事実であり、今後詳細がわかってくれば、韓国側はおだやかにはいられないだろう。韓国軍はこの数十年、実戦経験がないためだ。
韓国はウクライナ戦争開始以降、ウクライナには殺傷兵器を供与しないと方針を持っていたが、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は「段階的にウクライナを支援し、朝鮮半島の安全保障上、必要な措置を検討していく」と述べた。自国の兵器・装備を供与する可能性について明らかにしたものだ。
こうなると、ロシアも内心おだやかではないだろう。実は、韓国軍の装備・兵器の中には、長距離弾やミサイル、防空システムなどに、これまでのロシアとの軍事協力で得られた技術を利用して製造された兵器がある。
韓国製武器がウクライナに渡れば
韓国がこのような兵器をウクライナへ提供する動きをみせるとロシアは必ず牽制してきたが、それもこういう背景があるためだ。実現するとなれば、ロシアにとって相当嫌な状況になるだろう。また、韓国はウクライナの隣国・ポーランドに装備・兵器を輸出する計画を持っている。
結局、北朝鮮兵士のロシア派遣という事態について、現段階では、①一部の北朝鮮人がロシアにいる、それが戦闘兵力かどうかはわからない。②ロシア沿海州に3000人規模の北朝鮮兵士が移動して、何らかの訓練を受けているようだ。③もし兵士であれば、戦闘部隊の兵士か工兵部隊の兵士かさえもわからないということがわかるだけだ。
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