また、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は「北朝鮮との協力は第三国を狙ったものではなく、誰にも心配させることではない。このような協力は続ける。われわれの近い隣人でありパートナーである北朝鮮とすべての分野で関係を発展させており、これはわれわれの主権」と派兵に対して相対的に否定的なニュアンスを出している。
一方でロシアのプーチン大統領は10月24日、BRICSサミットの席上で北朝鮮の派兵について問われ、「もし画像があるというのであれば、何かを反映しているということだ」と派兵を完全に否定しなかったという。
ウクライナと韓国の情報当局が発表内容として示した数字は、実際にはどの程度のどれだけの具体性・実現性があるものだろうか。
派兵に関する人数だが、2000~3000人規模はありうると言える。自衛隊関係者は、AN124で往復しているのであれば、その人数程度の移送は可能だとみる。さらに船舶を使っているのであれば、兵士の移送はより多く行える。
ただ1万人、1万2000人という数字自体には疑問の余地がなくはない。運べるとしても、実際に戦場に送られることを前提にして派遣するのならば、異国の地で他国の軍と共同で作戦を行えるようにするためには、かなりの時間がかかるはずだ。
北朝鮮側の事情
北朝鮮軍の規模は、日本の『防衛白書』によれば約110万人と周辺国でも突出して多い。そのうち3分の2の兵力を、韓国と接するDMZ(非武装地帯)付近に展開させているとされる。一方、日本の自衛隊の隊員数は陸海空合わせて約25万人だ。
1万人規模となれば、各国軍隊の基準からすれば師団級の規模になる。韓国の国家情報院は「北朝鮮が特殊部隊4個旅団、1万2000人を派遣する計画」だと明らかにしている。旅団は師団よりも規模で一段階小さい編成だ。
110万のうちの1万人なら、ロシアに派遣できる十分な数にみえるかもしれない。2024年6月にプーチン大統領が訪朝して「包括的戦略パートナーシップ」を締結した。この中に、軍事分野での協力が盛り込まれているのは事実であり、派遣するという約束が盛り込まれた可能性はある。
一方で、北朝鮮は陸地で韓国軍と在韓米軍と対峙しているため、そうそう簡単に兵士たちをその場から引き離し、外国に派遣するとなれば相当な混乱が生じるのは間違いない。
2013年に北朝鮮は「経済建設と核武力建設の並進路線」を掲げた。これには、最大の抑止力にある核武力を確立することで通常戦力など軍事分野への投資を減らし、その分を経済建設に回せるという政策だった。これは現在も継続されている。
とはいえ、それでも国内での兵力と通常戦力を維持するための兵器は必要で、それらをやすやすと外国に輸出できるほどの経済力はない。これに加え、北朝鮮特有の事情も重なる。兵士という存在は軍事分野以上に貴重な人材だ。それは、兵士たちは国内の経済活動にも従事させられるためだ。
とくに2024年に入り北朝鮮の金正恩総書記は、地方経済の成長推進を重要政策に掲げた。その核となるものが「地方発展20×10」政策だ。これは「毎年20の郡で近代的な地方産業工場を建設し、10年以内に全国すべての市・郡で完工させていく」ことを表したものだ。
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