ミャンマーと白内障、あまり皆さんの中では結びつかないかもれません。しかし、実は世界で最も失明率が高い国はミャンマーなのです。そして、うち約70%が白内障による失明なのです。
そんなミャンマーに私は、2013年冬に初めて訪れました。日本人眼科医で、長年ベトナムで活躍している服部匡志医師と共にヤンゴンの眼科病院に到着した私は、そこで驚くべき光景を目の当たりにします。
病院の待合室や廊下は目の奥が白く濁った患者さんであふれ返っていました。あまりの人の多さに私は息を呑みました。皆、日本から名医が来るということで、ミャンマー全国各地から何日もかけてやって来ていたのです。
服部匡志医師と私たちは、来る日も来る日も朝から晩までエンドレスで手術をしていました。
気がついたら、クリスマスイブでした。
その日のヤンゴン眼科病院の朝も、患者さんたちとその家族であふれ返っていました。その中に、ほんとうに心細そうに、震えているお婆さんがいました。聞けば、シャン州というミャンマー北部からバスを乗り継いで2日もかけて来たそうです。
多くの人が失明の危機に
お婆さんは、朝の検査で糖尿病性網膜症と診断され、両眼とも失明寸前でした。しかし、服部匡志医師の、たぶんその頃には、疲れが絶頂であったにもかかわらず、的確な手術で、彼女も失明を回避することができました。
お婆さんは「ありがとう、ありがとう」と、何度も何度も言いながら涙を流していました。その泣いているような笑顔のような、そんな姿が、忘れられません。
人に「光」を与える。
その尊さを垣間見て、まるで私がクリスマスプレゼントを頂いたような、そんな気持ちでした。
でも、どうしてミャンマーではこんなに多くの白内障患者さんが出るようになってしまったのでしょうか。
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