KDDIが"デュアル5G戦略"で手にした大きな成果 通信品質で国内首位に立った背景に2つの要因

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今後、Massive MIMO(マッシブマイモ)と呼ばれる技術の導入や、保有する2つのSub6ブロックを同時に利用できる小型装置の展開を計画しているとKDDIは説明している。

MIMOは、Multiple-Input Multiple-Output(多入力多出力)の略で、多数のアンテナを使用して同時に複数の通信を行う技術。従来の基地局よりも格段に多くのアンテナを使用することで、通信容量の増大と通信品質の向上を実現する。甲子園球場での実験では、Massive MIMOの導入により通信速度が約1.6倍に向上した。

KDDIが保有する2つの周波数帯を利用できる新型Massive MIMO装置。6月のKDDI記者説明会にて展示されていたもの(筆者撮影)

また、KDDIが保有する2つのサブ6ブロックを同時に利用できる新たな装置の開発も進んでいる。サムスン電子製のMassive MIMO装置で、限られたスペースでより高速な通信が可能になると期待される。前田氏は「来年度以降、さらに高速なネットワークをお届けしたい」と話す。

一方で、こうした通信品質の向上をユーザーに実感してもらうことの難しさも課題として挙げられた。前田氏は「つながることが当たり前になっている中で、品質向上をどう伝えていくかは課題」と認めている。

スマホと衛星の直接通信でさらなる拡大

KDDIは、衛星とスマホが直接通信する技術の実用化に取り組んでいる。前田氏は「衛星とスマホの直接通信の実証実験をいよいよ開始する」と述べ、年内にもサービス開始を目指していることを明らかにした。

この技術は、高速・大容量の通信を提供するものではないが、KDDIはこれを山岳地帯や離島、災害時の通信手段として活用することを計画している。具体的には、圏外エリアでのテキストメッセージの送受信や、緊急時の位置情報の共有などが可能になる。

Starlink衛星とスマホの直接通信の実現も間近に控える(筆者撮影)

KDDIはアメリカの衛星通信会社Starlink(スターリンク)と提携し、この新しい通信サービスの開発を進めている。前田氏は「アメリカからの免許が発行され、日本でも実験局免許が下りた。制度整備についても総務省に多大なご協力をいただいており、年内に進む見込みだ」と説明した。

戦略的な5G展開と衛星干渉緩和の追い風により、国内通信品質で首位に立ったKDDI。Massive MIMOや衛星直接通信など次なる技術革新も視野に入れ、さらなる通信品質の向上を目指している。「つながって当たり前」の時代において、利用者が実感できる通信品質の向上をいかに実現していくか――同社の取り組みは、モバイル通信の新たなステージを切り拓こうとしている。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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