台湾に待ち構える4つの地雷、着火点は労働力人口の減少

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 確かに台湾では90年代以降、選挙のたびに各政党が、国家財政負担の増す公約を打ち出してきた。12年1月の総統と立法委員(国会議員)の同時選挙に当たって、与党は軍人・公務員・教員の賃金引き上げ、幼児教育補助の増額などの公約を提示。一方の野党は、高齢農民年金の増額を約束している。

実は03年に「財政規律法」案が、立法院で与野党攻防の焦点になったことがある。法案には「候補者または政党の政見が、もし政府支出の増加や政府収入の減少にかかわる内容の場合、資金源を具体的に明示しなければならない」「政見が財源を説明していない場合、また起債方式での調達となっている場合、選挙公報には記載しない」との条文が盛り込まれていた。しかし、この法案はいまだに成立していない。

そのほか、台湾の各種退職金制度が破綻の危機にある。公務員退職基金管理委員会が10年に実施した試算によると、現在の制度がそのまま変わらなかった場合、軍人の退職金基金は18年に、教員の退職金基金は27年に、最も規模が大きい公務員退職金基金は29年に破綻するという。一般市民にとって最も関係の深い労働者保険基金は31年に破綻するとしている。基金の累積赤字も35年には1兆台湾ドル(約2・6兆円)を超すという。こういった時限爆弾が起動すれば、返済の責任は国民一人ひとりにのしかかってくる。

(台湾『今周刊』No.777/楊紹華記者 週刊東洋経済2011年12月24-31日新春合併特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。写真はイメージです。本文とは関係ありません。
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