上場で注目、東京メトロ「2つの新路線」の現在 有楽町線と南北線の「延伸」は何をもたらすか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

整備に向け大きく弾みがつくきっかけとなったのは「豊洲市場の開設」だ。都は同区内への豊洲市場開設に際して、区と「土壌汚染対策」「交通対策」「新市場と一体となったにぎわいの場の整備」の3つの約束を交わした。この交通対策の柱が有楽町線の延伸で、都は2018年度中に整備スキームを示すとしていた。

だが、都が示したのは「東京メトロによる整備、運行が合理的」とする内容だった。東京メトロが新路線の整備を行わない方針を示していた中でのこの内容に、当時取材に応えた区の担当者は「事業主体や財源の調整もしておらず、スキームではないと認識している」と述べ、区側の都に対する不信感をにじませた。

有楽町線 豊洲駅
有楽町線延伸の起点となる豊洲駅(記者撮影)

新線と上場は「一体不可分」

新線の整備問題とともに、大きな課題となっていたのが東京メトロの上場だ。国は、東京メトロ株の売却益を東日本大震災の復旧・復興のために発行した復興債の償還費用財源に充てることを法律で定めている。国が売却を急ぎたい一方、都は地下鉄整備などのために東京メトロへの影響力を保ちたいとの考えがあり、思惑の違いから上場に向けた動きはなかなか進まなかった。

この2つの課題を一体にして前進させたのが、前述の2021年の答申だ。同答申は新線について「東京メトロに事業主体としての役割を求めることが適切」としたうえで、経営に悪影響を及ぼさないよう、国と自治体が事業費の約6割を負担し、残りは「都市鉄道融資」の制度により東京メトロがまかなう方策を示した。

あわせて、株式上場については「(新線の)事業主体となることと一体不可分のものとして東京メトロ株式の確実な売却が必要」との考え方を示し、「国と都が当面株式の2分の1を保有することが適切である」としたうえで、「国と都が共同で手続きを進め、同時・同率で売却をすることが重要である」とした。半分を保有し続けるのが適切としたのは、新線建設への影響を避ける狙いがある。

絡み合っていた課題がクリアになったことから、東京メトロは2022年1月に両線の鉄道事業許可を申請。同年3月に許可され、その後さまざまな手続きを経て今年6月に都が都市計画決定を告示し、工事着手に向けた準備が整った。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事