「今日は1階から片付けていきます。ネズミは基本的に2階の押し入れにいる可能性が高いので、上で(ネズミ駆除の)煙を焚いている間に、下を片付けていく予定です」
現場に入った、文直氏の弟でありイーブイのスタッフでもある信定氏がそう言うとおり、人の気配を察したのか2階の押し入れからも「ガサガサ……」とネズミが這い回る音がする。たしかに、1階で聞いた音よりも数が多い。
妻にも実家のことは内緒にしていた
この一軒家には70代の男性が住んでいた。一緒に住んでいた妻は早くに亡くなり、そこからずっと一人暮らしである。そして、今回の依頼者である息子とは長らく疎遠になっていたという。
病院で男性が息を引き取ったことを機に息子が久々に実家へ戻ると、想像もしていなかった光景が目の前に広がっていた。
大阪から離れた土地に住んでいたということもあったが、肉親の状況をまったく把握できていなかった自分を恥じていたという。見積もりのときの様子を文直氏が話す。
「実家がゴミ屋敷になっていたことは父親が亡くなるまで知らなかったようです。そんな状況は恥ずかしくて誰にも言えないけど、誰かに頼らないことには解決しないと悟ったとのことで、こっそり私たちに連絡をくれました。実際、息子さんは一緒に暮らしている奥さまにはゴミ屋敷の件を内緒にしていました。なので、すべて一人で対応されていて、片付けの当日は仕事があるというので現場には来なかったです」
聞けば息子は見積もりの際も家の中にほとんど入ろうとしなかったという。そのため、遺品を取り出すようなこともないまま片付けの当日に至った。
依頼の内容は「貴重品以外はすべて処分してほしい」というものだった。それぞれの家庭にそれぞれの事情があるが、背景を知れば知るほど悲しい気持ちになる現場だった。
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