中国で「沖縄特区」論、強まる沖縄への不穏な動き 日本政府と沖縄の離間が狙い?不毛な沖縄認識

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これをきっかけに2014年5月には北京大学歴史学部などによって「琉球・沖縄問題」をテーマとするシンポジウムが初めて開かれた。2016年5月の2回目以降は、沖縄のメディア関係者も参加するなど、国際会議として規模と内容を拡充して開催されるようになった。この会議は、2018年5月、2023年10月にも行われて現在までに計4回開かれている。

沖縄政策を所管する新研究機関

2020年代には、中国社会科学院日本研究所と新設されたその傘下機関が沖縄と東シナ海をめぐる論陣に新たに加わり始めた。2021年3月に「中国社会科学院東シナ海問題研究センター」が発足。同センターの活動は日本研究所の管理のもとに置かれ、センターのトップも日本研究所所長の楊伯江氏が兼任している。

東シナ海問題研究センターは、2022年と2024年に日本研究所と共同で沖縄・琉球関連の国際会議を開催している(表1)。前出の北京大学の主催会議とともにこれらの有力研究機関による沖縄問題と東シナ海情勢をめぐる「学術会議」の政治的格付けとその政策的実効性は従来の歴史研究の学術交流よりも格段に高い。中国社会科学院の研究者のなかには、国家安全部などのインテリジェンス部門に所属する人物も在籍していることは、日米欧の中国研究者の間では周知の事実である。

中国が開いた沖縄関連の会議

こうした「学術交流」活発化の背景には次の3点がある。①2012年に習近平氏が最高指導者になって以降、中国が台湾統一への取り組みと海洋進出を積極化させていること、②2018年の玉城デニー沖縄県知事の就任と2022年9月の再選、③同年10月の中国共産党第20回党大会後の習近平氏の個人支配の強化と長期化。これら日中関係・中国政治・沖縄県政のそれぞれの変化が挙げられる。

③に関しては、1980年代半ばから2000年代初めまでの福建省勤務で沖縄と中国とのつながりに個人的思い入れを抱くようになった習近平氏に対する社会科学院と同日本研究所の忖度と手柄争いが、東シナ海問題研究センター創設の一因となったと思われる。

表1にある「国際学術シンポジウム」ではどのような話し合いがなされているのか。直近で開かれた2024年5月の「東アジア平和発展と琉球学建設」国際学術シンポジウムでは、中国社会科学院秘書長である趙志敏氏が開幕の挨拶を行った。

趙氏は中国が善隣友好の外交政策を堅持する一方、冷戦思考に固執するアメリカとそれに追随する日本は、中国封じ込めのために沖縄への軍事力増強を図っているとし、地域の平和にとって重大な脅威になっていると非難した。今後は沖縄が「中琉友好往来の伝統」と琉球王国時代の「万国津梁」の役割を発揮して、「21世紀の海のシルクロード」の発展においても交流のハブとなることを期待すると発言した。

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