ANAのマレーシア線がJALと競合しない理由 13年ぶり再参入の狙いと課題を探る
昨年春に羽田空港で東南アジア線が大幅に拡充され、日本人利用者がシフトしたことで、成田発着のANA東南アジア路線は、外国人利用者の方が多くなっている。たとえば、日本国内で販売された航空券と海外で売られた航空券を路線別に見ると、ANAの羽田-バンコク(タイ)線では海外での販売比率が約2割なのに対し、成田-バンコク線は同約8割に及ぶ。日本人の旅行者・出張者は羽田便、海外からの訪日旅行客や北米などへの乗り継ぎ利用者は、成田便をそれぞれ使う傾向が顕著になっている。
マレーシアからの日本への訪日旅行客も増加傾向にある。タイと同じく、2013年7月に15日以内の短期滞在における訪日ビザが免除されたことや、円安の追い風もあり、2014年に日本を訪れたマレーシア人は24万9000人で前年から約4割増えた。
かつてANAがクアラルンプール線から撤退した直後の2003年は同6万3000人。今はマレーシアからの訪日客だけでも4倍に膨らんでいる。それに、今年1~6月の半年間で、海外から日本に来た訪日客(インバウンド)は前年比46%増の913万人、逆に日本から海外へ渡った日本人渡航者(アウトバウンド)は前年比4.9%減の762万人となり、今年は初めてインバウンドがアウトバウンドを上回ることが濃厚となっている。
外国人客を取り込まなければ先細り
人口減が進む日本人客をメインターゲットに据えていては、先細りする。外国人客を積極的に取り込まなければならない。ANAの13年ぶりとなる成田-クアラルンプール線の復活には、その意図が透けて見える。
マレーシアと北米を行き来する利用者の取り込みに向けて、ANAが挑む最大の敵はJALやマレーシア航空、エアアジアXではない。なんと香港のキャセイパシフィック航空である。マレーシア現地のビジネスパーソンに複数取材してみたところ、自国のマレーシア航空とエアアジアグループにはアメリカへの直行便はないことから、マレーシアから北米へ向かう際に、最も利用されているのが、運賃も安く効率的なスケジュールで乗り継げる香港経由のキャセイパシフィック航空なのだという。
ANAはここに目をつけ、キャセイパシフィック航空から利用者を奪おうとしているのだ。成田経由でのスムーズな乗り継ぎスケジュールを組み、戦える態勢は整えた。
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